神戸市北区の宅配物配送センターで2020年10月、男女2人が死傷した事件で、殺人・殺人未遂などの罪に問われた元パート従業員の男(47)の裁判員裁判が21日、神戸地裁で始まり、「間違いない」と起訴状の内容を認めた。
男は2020年10月6日未明、 配送センターの駐車場で、出勤直後の女性従業員(当時47)の脇腹を刃物で突き刺して殺害、男性従業員(61)殺害しようとしたとされる。男性は抵抗した際にけがをした。
男は初公判で、入廷後も腕を組んだまま、裁判長が氏名や住所を確認した際も「知らない」と述べるにとどまった。また、裁判で言いたくないことは言わなくてもいいという権利、「黙秘権」が行使できることについて告げられると「いいよ。全部しゃべってやる」と述べ、「俺がやったのは間違いない」と起訴内容を認めた。量刑が争点となる。
検察側の冒頭陳述によると、男は女性に対し一方的に恋愛感情を募らせ、男性には指導方法をめぐって不満を抱いていた。事件前日、男は男性従業員から「荷物の扱いが雑だ」と言われトラブルになり、女性が仲裁に入った。男はその日のうちに職場を解雇されたことから、被告は解雇の原因が2人のせいだと推測=邪推(じゃすい)したと指摘した。
しかし、これらは表面的な動機であり、本来の理由は、女性への恋愛感情が満たされなかったことや、男性との不和だったと述べた。
一方弁護側は、有無を言わさず、一方的に解雇されたことで落胆と怒りが生まれたと主張した。
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初公判を迎えて女性の遺族は、「事件発生から約1年3か月が経ちましたが、あの日から時が止まってしまったような感覚です。愛する家族を失った悲しみが和らぐことはありません。亡くなった本人は、自分のことは後回しで家族のことを大切にし、いつも明るく、みんなに慕われ、好かれていた、母であり、妻であり、娘であり、姉でした。そんな彼女のいた当たり前の日常が、犯人によって理不尽に奪われました。無念にも命を奪われた本人のためにも、しっかりと裁判の経過を見届けたいと思います」などとコメントした。