「学校給食」の思い出はありますか? 食を通じて紡がれる絆を描く映画『あしやのきゅうしょく』。今作を、映画をこよなく愛するラジオパーソナリティー・増井孝子さんが解説します。
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「給食」。何たるノスタルジックな響き…。底がべちゃっとしたコッペパンに、ちょっと焦げた匂いのする脱脂粉乳。現在の給食とはまるで違うものが登場していた自らの小学校時代を思い起こし、「まさに隔世の感がある」などと言うと年齢がばれそうで(別に隠していませんが)、あまり語ってこなかった給食の話。息子の学校の給食体験会でそのおいしさにビックリしたのが……それでも、もう25年くらい前のこと。給食は今やこんなことになっているのか? と、改めてカルチャーショックを受けたのがこの映画だ。
番組のゲストにも来てもらった監督の白羽弥仁氏は、1993年に、伝説の映画『She’s Rain』で監督デビュー。『劇場版 神戸在住』(2015年)や、日本台湾合作映画「ママ、ごはんまだ?」(2017年)、『みとりし』(2019年)などを撮ってきた。
ずいぶん前から、会うたびに「今、面白い作品を手掛けているんだけど、ちょっとまだ詳しくは言えない」と聞かされ続けていた、謎の作品がこれだった。芦屋市(兵庫県)の市制施行80周年記念映画として、学校給食をテーマに“食”を通して繋がっていく人々の“絆”が丁寧に描かれている。
芦屋市と言えば、日本有数のお金持ちが住む町というイメージで有名。小学校の給食は、独自献立、自校調理で、安全安心、おいしいということで知られている。もしかして、お金をかけておいしいメニューを作っているのかと思ったら、1食250円という予算は、文部科学省の調査による全国の1食あたり230円~270円のちょうど平均値だ。
じゃあ、おいしさの秘密は? と言えば、関わる人たちの努力や子どもたちへの愛情表現ではないか、ということが、この映画を観て分かった。市の規模がほどよい大きさであることも、独自色を打ち出しやすいポイントの一つかもしれない。
春。小学校に一人の新任栄養士の野々村菜々(松田るか)が赴任してくる。退任するベテラン栄養士の立山蓮子(秋野暢子)から、いろいろな情報の引継ぎを受けるが、アレルギー除去食や宗教上の問題など、対応しなければいけない問題は山積。彼女なりに一生懸命考えて努力しても、子供たちの評価はいまいちだ。
◆『あしやのきゅうしょく』
2022年2月4日(金)よりOSシネマズミント神戸、テアトル梅田、アップリンク京都にて関西先行公開、3月4日(金)より新宿武蔵野館ほか全国順次公開
※各劇場の上映日程は、作品の公式サイト・劇場情報でご確認ください。
配給:アークエンタテインメント
出演:
松田るか
石田卓也 仁科 貴 宮地真緒 藤本 泉 栗田倫太郎 小笠原拓己 芹沢 凜
堀内正美 / 桂 文珍 / 赤井英和 秋野暢子
監督:白羽弥仁 脚本:白羽弥仁 岡本博文
プロデューサー:高瀬博行 製作:映画「あしやのきゅうしょく」製作委員会
上映時間:96分
(C)2022「あしやのきゅうしょく」製作委員会
【『あしやのきゅうしょく』公式サイト】
【クックパッド「芦屋市の学校給食」】