なでしこジャパン(日本女子代表)では、前回のFIFA女子ワールドカップフランス2019や2021年の東京五輪のメンバーとして活躍するなど、27試合出場、2得点という実績を残しているMF杉田妃和選手。このたび初の海外クラブ挑戦として、アメリカ女子サッカーリーグ・NWSLのポートランド・ソーンズFCへ移籍することが決まった。1月31日に25歳を迎えたなでしこ屈指のレフティは、2月7日放送のラジオ番組『カンピオーネ!レオネッサ!!』(ラジオ関西)にゲスト出演したなかで、7シーズン在籍したINAC神戸レオネッサでの思いなどを語った。
年代別の女子ワールドカップで2度の大会最優秀選手を受賞するなど、育成年代での輝かしい実績を携えて、澤穂希さん、大野忍さん、川澄奈穂美選手ら世界一を知るメンバーが揃うINAC神戸に加入した杉田選手。ルーキーイヤーの2015年シーズンは緊張の毎日だったというが、女子サッカー界のレジェンドたちと中盤のポジションを争うなかで、いきなり挫折を経験する。そのときの心情を次のように吐露した。
「1年目に「『サッカーのどこが楽しいんだろう……』というところまでいきました。試合に出られないのもありましたし、自分の持ち味も何もわからなくなってきて、『何をしたらいいのか』と。もともと(技術などサッカーの)アイデア自体はあったものの、チームのなかでそれを出せなくて、もどかしくて、楽しくないなと。そこからあがいてから出るまでが苦しかった」
それでも、「1年目に試合に出られなかったのが本当に悔しくて、2年目には絶対出てやると思っていた」という杉田選手は奮起し、2016年シーズンの開幕戦で先発するなど、レギュラーの地位をつかんでいく。3年目には、2015年限りで現役を引退した澤さんがつけていた8番を背負い、主軸としてチームを牽引。2020年までのなでしこリーグ戦で93試合出場16得点という記録を残す。WEリーグ初年度の2021年には、背番号10番を身にまとい、サイド(ウイングバック)を担当。プレーの幅を広げるとともに、さらに中心選手としての存在感を発揮する。
満を持しての今回のオファーに関して「行きたい気持ちはあったので、行くことには悩まなかった」というものの、悩んだのは移籍のタイミング。INAC神戸がWEリーグ初代チャンピオンを目指す最中で、「やっぱりシーズンが終わるまでは一緒にやりたいなというのはありました」と、愛着あるクラブでのタイトル獲得への思いも少なからずあったようだ。
そんな杉田選手を後押しした1人が、INAC神戸の安本卓史社長。シーズン途中での主軸の離脱は、クラブとしても一大事だが、「海外クラブからオファーが届けば、いくのが当然と、背中を押した」と、日本女子サッカー界の宝といえる杉田選手の新たな挑戦を支持。「相当、悩み考えたと思うが、この決断が正しかったとプレーで証明してくれると期待している。INACも前半戦のリードを守り切り、初代チャンピオンの知らせをアメリカに届けることができたら、お互いハッピーになる。パワーアップした姿をなでしこジャパンで見せ、将来はINAC神戸に帰って来てくれることが一番の恩返しだと思うので、頑張ってきてください!」と、放送のなかで読み上げられたメッセージを通じてエールを送っていた。
また、安本社長は、過去の出会いを振り返りながら、杉田選手の一面を披露。「妃和(ひな)は、口数は少ないけど、責任感が強い選手。その表れが2019年のワールドカップ直後。フランスから帰国したばかりにも関わらず、試合前のファンイベント・ボール磨きに顔を出してくれて、ファンの方が非常に喜んてくださったのを覚えている」と、当時の秘話も披露。
そのメッセージに、照れ笑いを浮かべながら聞き入っていた杉田選手。番組の最後には、「いつも応援ありがとうございました。アメリカにいっても頑張ってきます! 引き続きINAC神戸の応援もよろしくお願いします!!」と、ファン・サポーターへメッセージを送っていた。
※『カンピオーネ!レオネッサ!!』2月14日放送回では、同番組エンディングテーマを歌うアーティストのSHIONがゲスト出演する。