春のお弁当にもピッタリの「竜田揚げ」 その名の由来は、いにしえからの雅な風景だった | ラジトピ ラジオ関西トピックス

春のお弁当にもピッタリの「竜田揚げ」 その名の由来は、いにしえからの雅な風景だった

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 言葉コラム「ことばコトバ」を担当するようになって、多くの人から「何でこんな言い方するの?」「この言葉はどんな意味から?」などと、言葉の疑問について尋ねられることが増えました。中でも目立つのが、料理に関するもの。たとえば、「『茄子の炊いたん』ってありますよね?『炊く』と『煮る』の違いって何ですか?」と聞かれた時には倒れそうになりました。この問いの答えは、いずれお伝えします。

 さて、今回は「竜田揚げ」です。「鶏の竜田揚げ」「白身魚のあんかけ竜田揚げ」など、飲食店のメニューで目にしたことがあるでしょうね。「竜田」というのは、食材の“揚げ方”なのかな?と思ったこともありましたが、奈良の方や、百人一首などにくわしい方なら、「竜田川」と関係があるのかな、と考える人もいるのかもしれません。調べてみると……本当に、その「竜田川」が関係していました。

『広辞苑 第七版』(岩波書店)には「竜田」の項目に「竜田揚げ」として掲載。「(揚がった色が赤いので、紅葉の名所竜田川に因む)魚・肉などを醤油や味醂で下味をつけ、片栗粉などをまぶして油で揚げた料理」とあります。

『言いたいことから引ける大和ことば辞典』(東京堂出版)には、言葉の意味の後に言葉の成り立ちなどとして、「『竜田』は紅葉の名所の竜田川(奈良県北西部)のこと。揚がった色が赤っぽく、所々が片栗粉で白く見えるところを、竜田川に流れる紅葉に見立てて名付けたもの」と載っていました。

 確かに、竜田揚げをよく見ると、食材の赤と衣の白の両方の色があり、見た目にも美しいですね。

 竜田川が流れている奈良県北西部とは、具体的には生駒郡斑鳩町(いかるがちょう)のあたりです。現在は「竜田公園」として整備されていて、竜田川(龍田川とも表記)が流れ、秋の紅葉の名所として古くから知られます。春には、三室山の桜を楽しむこともできます。こちらも、百人一首でも詠まれた美しい風景です。

 自然を満喫した後で「竜田揚げ」をいただく……いにしえに思いをはせることができそうですね。そんな春の一日を過ごしてはいかがでしょうか?

 言葉を知ることで、時代や背景が見えてくることがあります。「ことばコトバ」では、こうした言葉の楽しさを紹介していきます。

(「ことばコトバ」第47回 ラジオ関西アナウンサー・林 真一郎)


◆「ことばコトバ」アーカイブ記事

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