病気を患った場合、頭を悩ませるものの1つとして後遺症があります。なかでも脳卒中は後遺症が残る可能性が比較的高いといわれていますが、その後遺症の内容は人によって異なるのです。そこで今回は、脳卒中によって引き起こされる後遺症の種類や内容について、吉田病院付属脳血管研究所(神戸市兵庫区)の吉田泰久院長に詳しく聞きました。
――脳卒中の後遺症は人によって内容が異なるのですか?
そうですね。脳はそれぞれ分担して働いている部位ですので、脳卒中や脳梗塞などが発生した場所によって、後遺症の内容が変わります。
――なるほど。大脳は大きく分けて4つのパートに分類されるのですよね?
前頭葉、頭頂葉、側頭葉、後頭葉の4つに分けられ、それぞれに異なった役割を持っています。前頭葉は複雑な考えをしたり、後ろの部分では手足を動かすといった役割を担っています。さらに、言葉を発しているのも前頭葉です。頭頂葉は主に感覚を司っており、「熱さ」や「痛み」を直接感じ取ったり、モノの形などを認識する働きを持っています。側頭葉は耳から入った情報を処理し、言葉を理解する役割を担っているほか、内側部分では海馬といった記憶の中枢としての働きを持っています。そして、後頭葉は“見ること”に関係した働きをしており、目から入った情報は最終的にすべて後頭葉に集まってくるんです。そのため、後頭葉に後遺症が起こると、顔を見ただけでは誰なのか認識できなくなるという症状が出てくるんです。
――すべての後遺症がリハビリによって改善すると考えても良いのでしょうか?
記憶障害や複雑な思考ができない場合など、改善が難しい症状もあります。また、症状の強さによってもリハビリの効果は異なってきますね。症状が強い場合には、失われた機能を取り戻すというよりも、別のなにかによって代用させるという方法もあります。
――後遺症による記憶障害は、過去と直近どちらの記憶に障害が出るのですか?
最も影響が出やすいのは、直近の記憶といわれています。かなり昔の思い出は残っているにも関わらず、直近の記憶がなくなってしまうというのが多くのパターンなんです。
――どういった後遺症が出るかは、事前にわかるものなのでしょうか?
そうですね。たとえば、脳腫瘍の手術を行う場合、後遺症が出そうな場所の近くに腫瘍があると、手術を行うことによって影響が出る可能性がある、という予測を立てることがあります。つまり、後遺症の有無や強さなどは、脳卒中や脳梗塞などが起こる場所によって変わるんです。
◆吉田泰久 社会医療法人榮昌会 吉田病院 / 理事長兼院長 /
1952年12月の開設以来70年近くにわたり、神戸市の救急医療のなかでも脳卒中患者の診療を主に担い、急性期から回復期、在宅まで一貫した脳卒中治療を提供している。
診療科は、脳神経外科、脳神経内科、内科、循環器内科、リハビリテーション科