兵庫県警の刑事部長に着任した矢野浩司警視長が29日会見し、「いざという時に頼りになる刑事部を目指し、『そこまでやるか』の精神で、今の時代に求められる刑事の心根(こころね)を次世代に引き継ぎたい」と抱負を語った。
兵庫県警は、近畿では大阪府警とともに全国有数の大規模警察本部の1つだが、刑事部長は長年、警察庁採用のキャリアポストだった。1949(昭和29)年、警察法制定に伴い都道府県警察が設置されて以降、兵庫県警でノンキャリア(地元採用警察官)の刑事部長就任は59年ぶり4人目となる。
兵庫県姫路市出身。高校2年だった1980(昭和55)年1月、兵庫県宝塚市で起きた男児誘拐事件で、武庫川の堤防で兵庫県警の自動車警ら隊(現・機動パトロール隊)による職務質問で犯人検挙に結びついた報道に触れ、「人のために」と当初目指していた教師の道から警察官を志すようになった。
1981(昭和56)年に入庁し、約40年の警察人生の半分が刑事部門だった。2013年から2年間の捜査一課長時代は、神戸市長田区で当時小学1年の女児が殺害された事件(2014年9月)、人気グループ「関ジャニ∞(エイト)」の主演映画の公開中止を求めた甲子園球場爆破予告・脅迫事件(2014年6~7月)など捜査指揮に当たった。
このほか2014年~2015年に神戸市長田区と姫路市で2件の通り魔事件があり、早期段階で犯人を特定できたが、即時に逮捕状が請求できるほどの状況ではなかった。連続発生への懸念がよぎる中、次の犯行をいかしにして抑止できるかを考えて検挙に結びつけることが重要だと実感したという。
2015年8月の分裂から7年となる特定抗争指定暴力団・2つの山口組(六代目山口組・神戸山口組)については、派生した絆會とともに三つ巴の状況は変わらない。「散発的な抗争は続いている」と述べ、事務所明け渡しなど官民連携の対策の重要性を説いた。そして『半グレ集団』と呼ばれる準暴力団についても実態解明を急ぎたいとした。
そして昨年(2021年)8月、事件から10年10か月経過して犯人検挙に至った神戸市・男子高校生殺害事件(2010年10月4日発生)。当時は捜査一課の次席だった。「この事件はご遺族の執念で実を結ぶことができた」と話す一方、「コールドケース(未解決事件)の捜査でやり残したことを洗い出し、科学捜査の進歩も踏まえて、証拠や鑑定結果の精査や情報提供に結びつけるために、あらゆる媒体を通じた発信に力を注ぎたい」と話した。