地元では「須磨の天神さま」で知られる神戸市須磨区の綱敷天満宮で、手水舎(てみずや)の天井に「龍神」を描く作業が進められている。制作過程は参拝者も見ることができ、貴重な機会になりそうだ。
綱敷天満宮の現在は駐車場になっている辺りには、戦後間もない時期まで池があり、龍神様を祭っていた。「カメがたくさんいてよく遊んだ」と当時のことを覚えている人もいるという。このことからお社を建立することとなり、龍神は水に関係があることから手水舎に龍を描くこととなった。
描かれるのは「葛飾北斎風の阿吽の双龍」で、「阿」は求道心、「吽」は智慧を意味し、努力し励む人々を開運に導く。手掛けるのは文化財の修復にも携わる天野山文化遺産研究所の山内章さんで、長野県小布施町の東町祭屋台の天井に描かれた葛飾北斎の「龍図」をモデルにした。180年前に描かれた当時の色に近づけるよう、黄色や緑、青を使い「極彩色の龍」に仕上げていく予定だ。
「晩年の北斎はまさにポップアートだった。北斎の龍図の特徴は目。三日月の形をしている」と山内さんはいう。
綱敷天満宮では、およそ70年ぶりに本殿や拝殿などの修復作業がおこなわれている。その様子は、見ることはできないが、「龍図の制作作業」は公開されている。龍図は5月中旬に完成の予定だ。綱敷天満宮の久野木啓太宮司は、「作業風景を見ることは貴重な機会になる」と話す。「龍のお社」は今年末に完成の予定。