ピンク、白、緑、赤…“七変化”する桜とは 樹齢は1000年超「樽見の大桜」(兵庫県養父市) | ラジトピ ラジオ関西トピックス

ピンク、白、緑、赤…“七変化”する桜とは 樹齢は1000年超「樽見の大桜」(兵庫県養父市)

LINEで送る

この記事の写真を見る(4枚)

 兵庫県内には数多くの桜の名所がありますが、その中でも注目したいのが、13.8メートルの樹高を誇る、県内で最大のエドヒガンザクラ「樽見の大桜」(養父市)です。樹齢はなんと1000年を超えるともいわれ、国の天然記念物に指定されています。地元の学校の校歌に歌われたほか、その昔、出石藩の藩主が花を見るために訪れたという逸話から「仙桜」とも呼ばれ、親しまれています。

県内で最大のエドヒガンザクラ「樽見の大桜」(養父市・2022年4月12日撮影)
県内で最大のエドヒガンザクラ「樽見の大桜」(養父市・2022年4月12日撮影)

 樽見の大桜はすでに自力では立てず、木が倒れないよう、ジャングルジムのような鉄製の櫓(やぐら)がぐるりと取り囲んで老木を支えています。1967年頃から幹や枝に枯れが目立つようになり、1973年には地元に「樽見大桜保存会」が発足。その後も衰弱は続き、1993年には花や葉がさらに減少、幹や枝だけが目立つ状態になってしまいました。当時の大屋町(現・養父市大屋町)はこれを受け、文化庁や県教育委員会、県樹木医会などの支援を受け、樽見の大ザクラを復活させようと、土壌の改良や根の育成など、本格的な治療を始めます。現在に至るまで治療にあたっている、樹木医の宮田和夫(81)さんは、「良くなったり悪くなったりを繰り返しているが、去年くらいからまた元気になり始めた」と話します。

樽見の大桜の周囲を、ジャングルジムのような鉄製の櫓がぐるりと取り囲み、老木を支える(2022年4月12日撮影)
樽見の大桜の周囲を、ジャングルジムのような鉄製の櫓がぐるりと取り囲み、老木を支える(2022年4月12日撮影)
樽見の大桜の前に立つ、樹木医の宮田和夫さん。長年、木の治療にあたってきた
樽見の大桜の前に立つ、樹木医の宮田和夫さん。長年、木の治療にあたってきた

 2022年4月12日に取材班が訪れたところ、樹木全体を覆うほど多くの花や葉が茂っていました。同月9日、10日に満開を迎えたといいます。エドヒガンザクラの特徴として、花が落ちづらく、葉が伸びることが挙げられるそうです。葉が出ておらず、花がピンクの状態から、葉が伸びて緑が目立ち始めるころ、花の色がピンクから白に変化。さらに、宮田さんが見に来る時間帯として勧める夕刻には、「夕日に照らされた山の斜面に浮かび上がる桜の木が何とも言えない美しさになる」といいます。「ピンクから白、緑、夕日の赤……短い期間で“七変化”するので、見に来るたびに色やようすが違う。そこが面白いんです」(宮田さん)。

エドヒガンザクラは花が落ちづらいため、葉が伸びてくるとコントラストを楽しめる(2022年4月12日撮影)

 大桜の周りは、大桜の実から育った20本ほどの若い木が半円形に取り囲み、一帯がエドヒガンザクラの名所となっています。口大屋小学校(現在は閉校)の児童が2001年に植えたものです。宮田さんによると、「桜の花が散った後も、巨木が生きている姿を見て元気をもらいました、という声が多い」そうです。周囲は6.3メートルという、大きな幹の中心部は腐って空洞になっていて、縦方向に裂けて割れ目が入っています。痛々しい姿ではありますが、桜の木が歩んできた歴史に勇気を与えられる人は少なくないでしょう。

大桜の周りは、大桜の実から育った20本ほどの若い木が半円形に取り囲み、一帯がエドヒガンザクラの名所となっている(2022年4月12日撮影)
大桜の周りは、大桜の実から育った20本ほどの若い木が半円形に取り囲み、一帯がエドヒガンザクラの名所となっている(2022年4月12日撮影)

 4月の開花シーズンには約1万人が訪れる「樽見の大桜」。それ以外の季節には、四季折々の表情を見せます。宮田さんは、「年に1度とは言わず、2度3度、会いに来てやってほしい」と話します。北近畿豊岡自動車道の養父ICか、八鹿氷ノ山ICを降りて登山口にある駐車場に着いてから、徒歩で400m(約15分)登ると、桜の木が見えてきます。よい運動になり、すがすがしい気分になります。運動靴など、履きなれた靴で行くのがよいでしょう。

(ラジオ関西 Clip内コーナー「GO!HYOGO!」毎月第2週に放送「兵庫テロワール旅」より)

LINEで送る

関連記事