現在、60歳以上の100人に1人が発症するといわれているパーキンソン病。罹患した著名人も多いこの病気ですが、詳しい症状や発症原因をご存知でしょうか? ほかにも、遺伝性の有無や治療方法など、今回はパーキンソン病について、吉田病院付属脳血管研究所(神戸市兵庫区)の吉田泰久院長に詳しく聞きました。
――マイケル・J・フォックスが患っていることでよく知られているパーキンソン病ですが、どのような病気なのでしょうか?
パーキンソン病は高齢の方に多い病気といわれています。動きづらいという点が特徴として挙げられ、手足が硬くなり小刻みに震え、歩く際もトボトボと下を向きながらの姿勢になってしまうという症状があります。つまり、基本的には運動能力が衰えてしまう病気です。60歳以上の方の発症率が非常に高く、100人に1人がパーキンソン病を発症するといわれています。パーキンソン病というのは、脳のなかでもドーパミンを出す神経が最初に衰えてくる病気なんです。高齢になればなるほど、ちょっとしたパーキンソン病の症状が出やすくなります。
――遺伝性はあるのですか?
多いわけではありませんが、まれに遺伝が原因となる場合もありますね。
――生活しているなかで、発症しやすい人・環境の特徴はあるのでしょうか?
特定の条件が原因となることは少ないといわれていますが、ある文献によると殺虫剤や農薬の使用によって発症しやすくなるともいわれていますね。
――どのような検査方法があるのでしょうか?
振戦(しんせん)という手足の震えや、筋強剛(きんきょうごう)といわれる手足が硬くなる症状、無表情になるなどの無動(むどう)、これらの症状が揃うとパーキンソン病だと診断されます。
――手足が硬くなるというのは、動かなくなってしまうのですか?
まったく動かないというわけではないのですが、動作が緩慢になってしまうんです。
――根本から完治することは可能なのでしょうか?
パーキンソン病という、自然の成り行きによってドーパミンが出なくなってしまう症状を止めることはできません。ドーパミンを補充する薬を服用することで症状を和らげることはできるのですが、だんだん効果も薄れていき、10年20年が経つと手足が固まってしまうんです。しかし、リハビリは手足の動きを保つためにも非常に効果的といえます。ほかにも、脳に電極を挿入するDBSという治療法があり、脳に電気信号を送ることで症状を改善させることができます。60歳以上の方で、手足の震えや動きづらさを感じている方がいらっしゃいましたら、ぜひ診断を受けていただければと思います。
◆吉田泰久 社会医療法人榮昌会 吉田病院 / 理事長兼院長 /
1952年12月の開設以来70年近くにわたり、神戸市の救急医療のなかでも脳卒中患者の診療を主に担い、急性期から回復期、在宅まで一貫した脳卒中治療を提供している。
診療科は、神経外科、脳神経内科、内科、循環器内科、リハビリテーション科