眠っているとき、あなたはちゃんと呼吸できていますか? 自覚症状の少ない睡眠時無呼吸症候群ですが、そのままにしていると脳卒中を引き起こす可能性もあることをご存知でしょうか。脳卒中発症のリスクを高める理由と治療方法について、吉田病院付属脳血管研究所(神戸市兵庫区)の吉田泰久院長に詳しく聞きました。
――睡眠時無呼吸症候群になると脳卒中のリスクが高まるのですか?
睡眠時無呼吸症候群になるということは、夜中に息ができなくなってしまうということです。呼吸ができないと、その間に一時的に血圧が上昇してしまったり、不整脈が起こってしまいます。血圧が上昇するということは血管が傷んでしまうことを意味し、さらに心房細動という不整脈は脳卒中の原因にもなりえます。つまり、睡眠時無呼吸症候群は脳卒中を引き起こす危険性があるのです。
――睡眠時無呼吸症候群とはどのような病気なのでしょうか?
簡単に説明しますと、ひどいいびきにより途中で息が止まってしまう現象のことを指します。正常な場合はいびきをかいていても息はできているのですが、睡眠時無呼吸症候群になっている人は、空気の通り道となる“気道”が息が止まるほどに狭くなっているんです。気道が狭くなる原因の1つに肥満が挙げられ、太ることで口・喉周りにも脂肪がつき、気道が狭くなってしまいます。さらに、舌が後ろ側に落ち込んでしまい、喉を塞いでしまうんです。この場合、仰向けに寝るとますます気道を狭めてしまい危険ですので、症状を抑えるためにも横を向いて寝ていただきたいですね。
――どのような治療方法があるのでしょうか?
簡単な方法として、横を向いて寝ていただけると症状が少し緩和されます。病状が本格的に危険だと診断された方には、機械的に空気を送り込むマスクをして睡眠を取っていただきます。気道が閉塞しないように陽圧(ようあつ)をかけるマスクを一晩中つけて眠ることで、症状を抑えます。
――根本的な治療方法としてはどうしていくのが良いのでしょうか?
太っていることが原因で睡眠時無呼吸症候群になっているのであれば、痩せていただくのが最も効果的ですね。痩せることで首周りの脂肪が取れ、症状が改善されるはずです。
――痩せていても首周りに脂肪がついていると、睡眠時無呼吸症候群になってしまうということなのでしょうか?
そうですね。特にアゴの小さい方は、痩せていても睡眠時無呼吸症候群になってしまう危険性が高いんです。
――この病気は周りに気づいてもらえないと、自分自身では気づきづらいですよね。
自覚症状のみですと、症状がとことん悪化して、昼間眠くて仕方がなくなってから初めて気づくことになります。このような症状が思い当たる場合は、一晩中モニターをつけて眠る検査を受けていただきます。この検査により、睡眠中に酸素濃度が落ちていれば睡眠時無呼吸症候群だと診断されます。睡眠時無呼吸症候群は脳卒中発症のリスクもありますので、ご自身の睡眠時の状態について十分に気をつけていただければと思います。
◆吉田泰久 社会医療法人榮昌会 吉田病院 / 理事長兼院長 /
1952年12月の開設以来70年近くにわたり、神戸市の救急医療のなかでも脳卒中患者の診療を主に担い、急性期から回復期、在宅まで一貫した脳卒中治療を提供している。
診療科は、神経外科、脳神経内科、内科、循環器内科、リハビリテーション科