環境問題への関心が世界的に高まっているなか、兵庫県神戸市の自然環境で深刻な状況が生じている。「ゴマダラカミキリ」といえば子供たちの虫取りでも人気の虫だが、日本固有のカミキリムシであるゴマダラカミキリに非常によく似た、外来種の「ツヤハダゴマダラカミキリ」が急速に増えているという。特に、公園の樹木や街路樹などが食べられて枯れてしまう「食害」被害が問題で、同市は対策としてこの夏、動植物判定アプリを活用した市民参加型の生態調査や昆虫採集イベント、「カミキリムシ回収ポスト」の設置などで、ツヤハダゴマダラカミキリの駆除に乗り出す。
外来生物への対応は全国的な課題になっているが、神戸は国際的な港町であることから、木材などの荷物に紛れて外来生物が入りやすい環境にある。ツヤハダゴマダラカミキリは中国原産の外来昆虫で、中国から朝鮮半島にかけて自然分布。アメリカ、オーストラリア、フランス、ドイツ、イタリアなどにも生息地が広がっているという。一見、日本固有のカミキリムシのゴマダラカミキリによく似ているが、頭の下に白い紋がない点が異なるという。また名前の通り、体に艶が見られる。
国際自然保護連合(IUCN)が「世界の侵略的外来種ワースト100」に指定しているツヤハダゴマダラカミキリ。令和3年(2021年)には、日本の植物防疫法により「検疫有害動植物」(国内へ持ち込まれないよう留意する対象)に指定された。
神戸では同年7月に、同市東灘区の人工島「六甲アイランド」内で存在が確認された。市内ではとくに落葉樹の「アキニレ」が、ツヤハダゴマダラカミキリの幼虫に食べられ枯死するという大きな被害が出ているという。日本固有のゴマダラカミキリも、ミカンの木などに害を及ぼすことはあるものの深刻な被害にはならないそう。
過去に国内でツヤハダゴマダラカミキリが確認されたのは、2002年。横浜市で初確認されたあと、2年ほどでの根絶に成功した。以後20年近く発見されなかったが、近年、全国的に被害が拡大しているとのこと。
ツヤハダゴマダラカミキリの成虫は6月~9月に発生、冬には死滅するが、卵や幼虫、さなぎは樹木の中で越冬する。毒性は無く、人体への被害は報告されていない。
同市では、今年1月から2月にかけて、六甲アイランドの公共用地(港湾緑地・公園、街路樹等)で被害を受けている約430本のアキニレの木を伐採・焼却することで、樹木に潜んでいる幼虫やさなぎを駆除してきた。6月1日からは、動植物、約93,000種を判定するスマホアプリ「Biome」を活用した市民参加型の生態調査企画を実施。市民が採集したカミキリを回収する「カミキリポスト」を同島内に設置する。