兵庫県姫路市の北隣り、福崎町に「妖怪ベンチ」なるものがある。実にリアルな実物大の妖怪が居座る休憩所。辻川山公園に現れる河童と天狗が有名な同町だが、実は町内19カ所に、この妖怪ベンチが設置されているのだ。
きっかけは、郷土が産んだ民俗学者・柳田國男の著書『故郷七十年』。ここに登場する市川の河童「ガタロ」に加え、弟の「ガジロウ」と天狗のリアルオブジェが2014年に辻川山公園で造られて以来、JR福崎駅から公園までの道中に賑わいを持たせる目的で妖怪ベンチプロジェクトが始まった。
発端は、町職員の街づくりアイデア。同年から5年続けて「全国妖怪造形コンテスト」を行ったところ、世界中から応募が集まった。各年の最優秀作品5点は辻川山公園に実物大オブジェとして置かれているが、他の応募作品(妖怪)も、ミニチュアにして辻川観光交流センターで展示してあるから必見。妖怪ベンチは、それらの作品の中から厳選して製作されたものだ。
妖怪ベンチのほとんどは、飲食・食品関係の店舗前に陣取っており、訪れる観光客の食欲に働きかけている。またJR福崎駅前には、ガジロウが公園から地中を通って現れるという仕掛けも整備されている。これらのプロジェクトが奏功し、それまで約24万人だった観光客数は、コロナ前には倍の48万人以上にまで増えたという。
同町はさらに「洗濯狐」「喰わず女房」という新しい妖怪ベンチ2基の設置店舗と、辻川観光交流センターにある「雪女」の移設先を募集中で、11月頃には新スポットに登場する予定。
妖怪ベンチを巡るには駅前と辻川の両センターで貸し出しているレンタサイクルが便利だ。同町観光協会では、妖怪ベンチ巡りのマップも用意している(公式サイトからダウンロード可能)。これから暑くなるので、各所で休憩を取りながら、ぜひ妖怪巡りをされることをお薦めしたい。(播磨時報社)