サッカー・J1のヴィッセル神戸は29日、ミゲル・アンヘル・ロティーナ監督(65)との契約を6月28日付けで解除したことを発表した。後任にはクラブで選手としても活躍し、監督としても2度にわたって率いた経験を持つ吉田孝行氏(45)が就任。7月2日に行われるJ1第19節のサガン鳥栖戦が最初の指揮となる。
ヴィッセルは今シーズンのJ1リーグ戦で開幕ダッシュに失敗し、4分け3敗となった直後の3月20日に当時の監督だった三浦淳寛氏(47)との契約を解除。ヤングプレイヤーデベロップメントコーチを務めていたスペイン人のリュイス・プラナグマ氏(41)が2試合で暫定的に指揮をとった後、4月8日にロティーナ氏を新監督に迎え入れていた。
経験豊富なスペイン人指揮官のもとチームの再建を図ってきたなか、ACL(AFCチャンピオンズリーグ)では決勝トーナメントに進出。天皇杯(天皇杯 JFA 第102回全日本サッカー選手権大会)でも3回戦を突破したヴィッセル。しかし、けがなどでメンバーがなかなかそろわないこともあって、J1リーグ戦ではロティーナ体制でも2勝1分け6敗と苦戦。5月には4得点を奪っての快勝が2試合で見られるなど改善傾向にあったものの、日本代表戦による中断期間が明けた後の第17節柏レイソル戦、第18節浦和レッズ戦で2連敗。最近の試合ではチームの歯車がかみあわない場面が散見された。
ここまでJ1で18試合を終えて2勝5分け11敗(勝点11)と低迷し、現時点で最下位のチームは、J1残留圏内の15位湘南ベルマーレ(勝点19)とは勝点差が8に。後半戦に入った直後に、クラブはまたしても大きな決断を下した。
なお、ロティーナ氏の契約解除にともない、ヘッドコーチのイヴァン・パランコ氏(42)との契約も解除となる。
ロティーナ前監督はクラブを通じてコメントを発表している。
「ヴィッセル神戸に関わる皆様にお別れの挨拶をしたいです。まず、三木谷会長と強化部へ、私を信頼してこの偉大なクラブの歴史に加わるチャンスをいただけたことを感謝したいです。また、コーチングスタッフ、メディカルスタッフ、マネージャー、そしてクラブの職員のすべての方の努力とサポートに心からお礼を言いたいです。
サポーターの皆さん、私と家族に愛情を持って接してくださりありがとうございました。皆さんの応援はクラブにとってとても重要なものです。これからも引き続きクラブへの応援、サポートよろしくお願いいたします。
最後に、プロフェッショナルな姿勢で多大な努力をしてくれた選手たち全員に感謝したいです。この姿勢で努力を続けることが、きっと結果につながっていくと信じています。
チームの悪い流れを変えることができず、順位表で上にいくお手伝いができなかったことを申し訳なく思っています。ただ、チームはまだ4つの大会で戦っており、まだまだ素晴らしいシーズンにする時間は十分残っています。クラブ、選手、サポーターがともに団結して戦い続けることができれば、きっと実りあるシーズンにできることを確信しています。
改めて、これまでどうもありがとうございました」(ロティーナ前監督)
兵庫県川西市出身、滝川第二高校卒の吉田氏は、横浜フリューゲルス、横浜F・マリノス、大分トリニータでのプレーを経て、2008年から6シーズン、ヴィッセルで活躍した、クラブのレジェンドの1人。現役引退後は、アンバサダー、トップチームのコーチを経験後、二度にわたって監督の座についた。2020年からはJ2のV・ファーレン長崎でコーチ、監督を務めた後、今年からヴィッセルに戻り、強化部のスタッフとなっていた。
吉田新監督もクラブを通じて意気込みをコメント。「今シーズンより大好きなヴィッセル神戸に戻り、チーム強化に努めてまいりましたが、クラブは非常に苦しい状況にあります。このような状況でもスタジアムへ足を運び素晴らしい雰囲気を作って応援してくれるファン、サポーターの皆様の期待に応えられていないことを非常に申し訳なく感じております。この厳しい現実を打破するべく私のことを信頼し、このような機会を与えてくれるクラブの力になるため、監督を引き受けさせていただきました。苦しい中だからこそ、サポーターやスポンサーの皆様をはじめヴィッセル神戸に関わる全ての方々と一致団結して、この難局に立ち向かうことが必要だと考えております。ヴィッセルファミリーのために、全力で働きます」。
MFアンドレス・イニエスタ選手を筆頭に、FW大迫勇也選手、FW武藤嘉紀選手、MF山口蛍選手、DF酒井高徳選手、DF槙野智章選手など、経験豊富かつ世界を知るメンバーがそろっているヴィッセル。度重なる監督交代という劇薬を経て、クラブのスローガンでもある「一致団結」で這い上がることができるか。7月からの戦いに注目が集まる。