「人が人の前に立つということは何なのか」という問いのもと、2017年6月から、自身のパフォーマンスを毎日必ず「上演」し続けてきたアーティスト・武本拓也さん。今年5月からは、兵庫県豊岡市にある城崎国際アートセンターで、約1か月半にわたり滞在制作を行っている。7月2日(土)にその成果発表会が開かれる予定だ。
そんな武本さんが、このたび、ラジオ番組『平田オリザの舞台は但馬』(ラジオ関西)に出演。豊岡での滞在制作を振り返るとともに、今後への意気込みを語った。
武本さんは1990年群馬県生まれ。2013年に武蔵野美術大学を卒業後、IT系企業で会社員として働きながら、舞台表現を模索。2017年からは、地元公民館などで、終業後にパフォーマンスを行う活動を開始。観客の有無にかかわらずの「上演」を現在も継続している。
5月18日からは城崎国際アートセンター(KIAC)に滞在。日中はKIACに新しくオープンしたワーケーションスペースでリモートワークを行い、平日夜はKIACのスタジオで、土日は温泉寺本堂(城崎町)や「ふれあい公設市場」(千代田町)、出石酒造(出石町)など、市内各所でパフォーマンスを実施している。
武本さんのパフォーマンスは、演劇・ダンスをはじめとする既存ジャンルに属するものではない。観客の視線や音など、舞台芸術を構成する要素を細かく広いあげてゆくものだけに、「わかりづらい。人気が出たり、評価の軸に乗るようなものではない」(武本さん)
だが、ゆっくり舞台上を移動するパフォーマンスこそが自身の考えに一番沿っていると判断し、「続ける」ことを優先した結果、働きながら毎日上演するというスタイルに至った。
番組パーソナリティで劇作家・演出家の平田オリザさんは、「私の師匠にもあたる太田省吾さんという先駆者がいらっしゃいます。ゆっくり、舞台の端から端を20分くらいかけて歩くだけ。でも、途中でリンゴをゆっくり拾うという動作がでてくると、私たちが生きてることとか死んでることはこの「リンゴを拾う」という動作とほぼ等価じゃないか、って見えてくる瞬間がある。アートのいちばん原初的な営みといえますね。(学長を務める芸術文化観光専門職大学の)学生も、武本さんのパフォーマンスを見て『こんな働き方もアリかな』と刺激を受けたようです。」と語った。
武本さんは「城崎はいわゆる観光地のイメージがあったけれど、居心地が良い。東京では考えられない環境でパフォーマンスができています。このスタイルを続けながらいろいろな活動にチャレンジしたい」と、充実感をにじませながら、今後への抱負を述べた。
武本さんの「『これまでの5年間の言語化と、次の5年の為のリサーチ』最終報告会」は、7月2日(土)午後2時から。料金は無料。予約・問い合わせは城崎国際アートセンター(電話0796-32-3888・午前9時~午後5時)。詳しくは同センターの公式サイトで確認できる。
※ラジオ関西『平田オリザの舞台は但馬』2022年6月30日放送回より
☆☆☆☆☆
【武本拓也 「これまでの5年間の言語化と、次の5年の為のリサーチ」最終報告会】
日時:2022年7月2日(土)14時~(上演:60分程度 ※全体で2~3時間を予定)
会場:城崎国際アートセンター 《公式HP》
料金:無料
予約・問い合わせ:城崎国際アートセンター 電話0796-32-3888(受付午前9時~午後5時)
※~7月4日(月)までの平日夜もKIACで観覧可能(入場無料)
※『ラジコ』では放送後1週間はタイムフリーでの聴取が可能。番組では、平田オリザさんが、ともにパーソナリティーを務める田名部真理さんと、これまでの自身の話しや演劇界への思い、移住拠点となっている兵庫・豊岡、但馬地域について、トークを進めていく。
『平田オリザの舞台は但馬』
放送日時:毎週木曜日 13:00~13:25
放送局:ラジオ関西(AM 558khz / FM 91.1mhz)
パーソナリティー:平田オリザ、田名部真理
メール:oriza@jocr.jp