サッカーの天皇杯(天皇杯 JFA 第102回全日本サッカー選手権大会)は、13日、4回戦(ラウンド16)の7試合が行われる。2度目のカップウイナーを目指すヴィッセル神戸は、ノエビアスタジアム神戸で、同じJ1の柏レイソルと対戦する。キックオフ予定は午後7時。
そのスターティングメンバーが発表され、ヴィッセルは9日の明治安田生命J1リーグ戦第21節ジュビロ磐田戦から先発を9人変更。MFアンドレス・イニエスタ選手はベンチからのスタートになり、FW武藤嘉紀選手、FW大迫勇也選手、MF橋本拳人選手がメンバー外となった。その一方で、DF槙野智章選手が2か月ぶりに公式戦のピッチに立つことになった。
吉田孝行監督体制になって、J1リーグ戦で3連勝を達成。3度目の監督交代に踏み切った6月末には最下位に低迷していたクラブは、順位も16位に浮上。いずれも終盤のゴールで勝ち切り、タフな試合をものにしてきただけに、雰囲気は間違いなく上向きのヴィッセル。この13日には「EAFF E-1 サッカー選手権 2022 決勝大会」(7月19日~7月27日)に臨む日本代表メンバーが発表され、チームの勝利に大きく貢献している武藤選手と橋本選手が代表に復帰。うれしい話題も届き、チームの上昇ムードがさらに高まっている。
中2日、中3日というタイトな日程で続いた公式戦5連戦。その4試合目で迎えるのは、ACL(AFCチャンピオンズリーグ)につながる大会となる、天皇杯の4回戦だ。「連戦のなかでの天皇杯だが、我々にとっては重要な大会。しっかり勝ちをとれるようにしていきたい」と吉田監督もいうように、神戸の地で、当然、クリムゾンレッドは今回も勝ち上がりを目指す。
そのなかで、試合前日に、「連戦でターンオーバーということも当然考えているが、別にメンバーが変わったからBチームで行くとか、そういうのではない。自分は、勝てると思うメンバーを選ぶ」と指揮官はコメント。若手や出場機会に恵まれなかった選手たちが中心となる構成だが、吉田監督になってから起用が増えだしたMF中坂勇哉選手や、同じく生え抜きのFW佐々木大樹選手、天皇杯3回戦ではゴールも決めているDF初瀬亮選手ら、活きのいい選手たちを先発に並べただけでなく、最終ラインには頼もしきガッツマン、槙野選手も帰ってきた。ベンチにはイニエスタ選手のほか、天皇杯3回戦で決勝点を決めたDF酒井高徳選手や、MF山口蛍選手、MF汰木康也選手らが控えている。
ヴィッセルは柏に、6月18日のJ1第17節、アウェイ戦で1-3と敗れている。そのときには橋本選手のヴィッセルでの初得点で先手を取りながら、前半のうちに逆転されると、後半にもセットプレー絡みで失点。当時、ロティーナ監督が相手の戦術に合わせて3バックを採用したが、機能せず。後半に元の4バックにして、途中出場の汰木選手らを中心に反撃に出たが、及ばなかった。
ヴィッセルとしては当時のリベンジを果たしたいだけではなく、J1でも7月30日に柏とのホームゲームが待っていることもあり、リーグ戦につなげる戦いで結果を残したいところ。「ネルシーニョ監督は(ヴィッセル時代に)自分はヘッドコーチとして一緒にやっていましたし、よく知っていますが、戦うという部分では本当に手を抜かない監督。そういう意味では、やっかいという言い方は失礼かもしれないですが、難しい相手」と、相手の名将をよく知る吉田監督は警戒するも、「我々は自分たちのサッカーというのがチーム内で浸透しつつある。天皇杯もそうですし、リーグ戦もすぐレイソルとありますし、前みたいにならないように戦っていかなければいけない」と勝利へ意気込む。最近のヴィッセルは、ボールを奪い切るアグレッシブな戦いに変貌し、選手の個性がかみ合いだしたことで息を吹き返してきているだけに、そのいい内容をメンバーが変わってもつなげていきたい。
今回、先発に名を連ねた1人、中坂選手は、2016年、トップチーム昇格を果たしたときに、ネルシーニョ氏の指導を受けた、いわばネルシーニョ・チルドレンの1人。「僕がプロ1年目で指揮してもらった監督で、思い出ももちろんありますし。だからこそ明日の試合(天皇杯4回戦)に勝って、自分のチーム的にもそうですが、自分の成長した姿を見せられたらいいなと思います」と述べる背番号31も、静かに闘志を燃やしている。「1対1で負けない、球際で負けないっていうところは、僕が1年目の時もそうですし、(柏でも)今もそこは変わりないと思う。ボールに激しくくると思うので、中盤でとられてカウンターというのは、自分たちもすごく気をつけなければいけない」と、勝手知ったるネルシーニョ監督のサッカーへの対応も心得ている中坂選手。サポーターが作った横断幕「わくわくライオン」の愛称にふさわしいようなアグレッシブなプレーに注目だ。
そして、「相手どうこうよりも自分たちが主導権を握るというところが一番大事」と語るのは、左サイドからのクロスが持ち味の初瀬選手。「5バックの相手に対してどう守っていくかというところは、チームとしても全員で考えながら、どこでハメていくかであったり、奪いどころをチームとして統一して戦いたい」と、前回の反省をいかしつつ、「自分の良さは攻撃だと思うので、そこの違いを見せられれば」と語る19番は、「天皇杯は一発勝負なので、1点の重みは相当重い。先制点が取れれば神戸としてもいい試合運びができるかなと思うので。あとは球際だったりというところは、チームとしてもベースではあるので、相手に負けないというところは前面に出していけたらなと思います」と、こちらも闘志むき出しでこの大事な一戦に挑む覚悟だ。
「今、チーム力ですべて勝っている。誰かひとりで勝っているのではなくて、みんなで勝っている。そういうふうに気持ちが一致団結しているから、勝てているというところはある」と吉田監督。この一戦は、2回戦、3回戦と同じく、ヴィッセルの総力が試される試合となるだろう。