天皇杯第99回全日本サッカー選手権大会は23日、準々決勝の4試合が行われ、ヴィッセル神戸はノエビアスタジアム神戸で大分トリニータと対戦し、神戸が山口蛍のゴールで1-0と勝利した。試合後の記者会見で、神戸のトルステン・フィンク監督は、「無失点で終えたことが大きいと思うので、その新たな波に乗って、選手たちも自信を取り戻していけるかと思う」と、J1リーグ戦最近の2試合で続いていた複数失点での連敗から立ち直った選手たちを称賛していた。以下は、試合後の監督会見コメント。
トルステン・フィンク監督(ヴィッセル神戸)
「まずは次のラウンド(準決勝)に進出できて、本当にうれしいです。最近2試合では敗北が続いていたので、選手たちも少し自信をなくしていたところもあったと思いますが、今日(天皇杯の大分戦)はそのメンタルの強さも見せましたし、サッカーの面でもいいプレーができていたんじゃないかなと思います。ただ、前半に関しては、お互いあまりスペースを許さない状態が多く、そこまで理想とするサッカーはできず、相手にも2つのチャンスを許してしまったというのもありました。ですが、全体の試合をみて、我々は本当にディフェンスのパフォーマンスもよかったと思いますし、決勝点も決めて、しっかり勝利をつかめたと思います。
今日も少しメンバーチェンジがありました。また、前回とちょっと違うのは、山口蛍選手のポジショニングを、より中盤に入れることによって、前の3人のプレッシングをいかせることができたというところもあると思います。今日は無失点で終えたことが大きいと思うので、その新たな波を作り、それに乗って、選手たちも自信を取り戻していけるかと思います」
――試合終了のとき、監督をはじめ輪になって喜んでいたが、この天皇杯への思いは強かったか。
「もちろん、この大会を優勝したいという気持ちは非常に高いです。このクラブの初タイトルという目標があります。それは選手だけではなく、クラブだけではなく、監督、スタッフ全員、その思いが強いので、自然にああいう形になったと思います。忘れてはいけないのが、2試合負けが続いているので、こういう勝利によって、気持ちが楽になるところもあります。次の試合までまた少し時間が空くので、敗北だと考える時間が多くなるところもありますが、勝利ができて、いい気持ちで次に挑めると思います。
ただし、もう1つ忘れてはいけないのは、J1リーグの順位でも、まだ安全な場所にはいないということ。(これからの試合で)できるだけ勝点も取りたい。今シーズンも残りあとわずかですが、残りのリーグ戦も全部勝ちたい気持ちで挑みたいので、今日勝ったことによって、大きな(いい)影響が出ると思います」
――山口選手のポジション取りを少し変えた狙い、彼に求めた役割について。
「ここ数試合よりは、より真ん中にポジションを置き、彼は最近アウトサイドにいかせていた場面が多かったのですが、それはほかの選手に任せて、彼をもうちょっと守備的なポジションに置きました。彼は、今日は本当に素晴らしいパフォーマンスをしてくれましたし、得点も取りましたし、パスカットやデュエルの成功率、走行距離、すべてをみると、本当に素晴らしいパフォーマンスだったので、プレーをほめてあげたい」
片野坂知宏監督(大分トリニータ)
「水曜日のナイトゲームで、我々にとってはアウェイで、神戸さんが相手。非常に厳しいゲームになるという覚悟を持って臨みましたが、残念な結果になって、たくさんの応援に来ていただいたファン・サポーターに対して申し訳ない気持ちです。(J1)リーグ戦でいい形で勝点3をとり、今日もその勢いで神戸さん相手にもチャレンジするということで、選手はしっかり準備してきたことをトライしてくれたとは思います。ただ、やはり、力の差というか、プレーしている選手もそういったところを感じたんじゃないかなと思います。点差は0-1でしたが、やはり神戸さんのほうが上だったなと。我々の時間帯も、いい時間帯があって、前半の終了間際ですが。そこで得点を取っていれば、また違う展開にはなった可能性もありますが、そこを決め切れなかったこと。そして、後半、アクシデントがあったり、選手層というところでも、神戸さんとの差はあるかなと思います。とにかく、天皇杯というカップ戦が終わって、残りのリーグ戦に向けて、しっかりと切り替えて、目標を達成できるように、準備してやっていきたいと思います」
――今も力の差とおっしゃられていましたが、神戸のほうがリーグで強化費が一番多く、大分は強化費が(J1)リーグ最下位という感じですが、そういった部分が影響したと思われますか。また、そういう条件もありながら、同じJ1で戦っているといくということについては。
「そうですね、神戸さんの選手の予算を考えたら、我々の何十倍も上なので、力量の差、選手層の厚さ、クラブ力、いろんな面で、間違いなく(神戸は)格上になる相手。ただ、サッカーの面白さというのは、お金ではないですし、そこをチーム力として、組織として、カバーできる部分があると思うので。我々はそういうチーム作りを、私が就任してから、2016年のJ3から、ゆくゆくはJ1で定着できるチームというところを見据えたなか、チーム作りで、チームとしてやっていくなか、こうやってなんとかJ1でやれているので。その個人のところと、組織のところでも、こうやって上回れるときもあるし、チームとしての戦いは逆にこちらが上回って勝てる試合もあったり、そういう展開になるのもサッカーだと思いますし、それが面白さになるんじゃないかなと思います。我々は後者で、組織としてそこをカバーしあいながら、このJ1のリーグで残留して、定着していけるようなチーム作りをすることがベストだと思っていますし、それを継続してやっていく。ただ、お金があれば、ああいう選手が欲しいですね……。いたらいいなと思います。ただ、これはもうクラブとの話し合いもありますし、クラブも非常に頑張っていただいて、強化費のところも、いまJ1では最下位かもしれないですが、それも、少ないかもしれないですが、少しずつ上回って、来年もまたやっていけるような準備も整えていただいているところなので。そうやってクラブも上を目指して定着できるチーム作りを本当に協力してやっていただいているので、そこは感謝しながら、現場としても、(J1に)残れる、そして、J1で戦える戦術というのを、(今)いるメンバーのなかで、しっかりと見極めながらトライさせてやっていくことが大事だなと思います」