コロナ禍や世界情勢による穀物価格・輸送費の高騰に伴い、肥料やその原料も昨年から上昇傾向にある。窒素・カリウムとともに肥料の三大要素である「リン」は、食料生産に不可欠な資源だが、その元となるリン鉱石は世界的に枯渇しつつあり、日本ではすべてを輸入に頼っている状態だ。そこで神戸市は、「神戸市東灘処理場」で、リンを下水汚泥から回収する取り組みを進めている。
◆リンの回収を行う「神戸市東灘処理場」とは
市内最大の下水処理場。同市東灘区・灘区・中央区の下水の半分を処理しているのにくわえ、市バスの燃料などに使用されるバイオガスの精製も行う。また「神戸下水道の歩み館」では、下水道技術の情報発信やご当地マンホールの展示も行っている。
◆下水処理の工程で「リン」成分を回収
リンは、魚介類、穀類、卵類、乳類、豆類などに多く含まれ、骨や歯などを作る重要な成分だ。細胞膜やDNAなどにもリン酸が含まれ「いのちの元素」と言われる。また農業では肥料や飼料に使われる。
これまで、下水処理の工程で除去されるリンは産業廃棄物として破棄されてきたが、神戸市は平成24(2012)年度の国土交通省B-DASHプロジェクトの一環で「神戸市東灘処理場 栄養塩除去と資源再生(リン)・革新的技術実証事業-KOBEハーベスト(大収穫)プロジェクト-」をスタート。下水の汚泥から回収した「こうべ再生リン」を、肥料原料として肥料メーカーに販売している。
◆「こうべハーベスト肥料」
こうべ再生リンを配合したのが「こうべハーベスト肥料」。市内の農家で、キャベツやスイートコーンをはじめとする「こうべ旬菜」などの野菜や、学校給食米(きぬむすめ)の栽培に広く活用されている。2020年には、国土交通大臣賞(循環のみち下水道賞)を受賞した。JA兵庫六甲・神戸西グリーンセンターでは、園芸用の「こうべハーベスト10-6-6-2」、水稲用の「こうべハーベスト水稲一発型」を販売している。
神戸市建設局下水道部計画課の岡さんは、「地域で資源循環の仕組みを作ることはとても重要。再生リンを使った肥料で育てた野菜の収穫体験や給食などが、子どもたちへの食育にも繋がっている。地球環境や未来につながる取り組みなので、ぜひ広く知っていただき、活用してもらえれば」と話している。
※ラジオ関西『サンデー神戸』2022年8月21日放送回より