ロシアによる軍事侵攻で関西に避難しているウクライナの女性が、8月20・21日、母国の料理を販売するキッチンカーを大阪・梅田の複合商業施設「グランフロント大阪」に限定出店した。24日に侵攻から半年となり、終わりの見えない戦闘の中、避難者が故郷の家族や友人を案じる日々が続く。
ウクライナ東部のハルキウ(ハリコフ)に住むイリーナ・ヤボルスカさん(51)は軍事侵攻直後の2022年3月、80歳の母親とともに、娘のカテリーナさん(31)夫妻が暮らす滋賀県彦根市へ避難した。
ハルキウはウクライナ第2の都市。工業都市だけに、ロシアは軍事侵攻開始直後に攻撃し、8月に入っても、激しいミサイル攻撃を続けている。イリーナさんは兵役のため出国できない夫を残し、生きてゆくために母とともにウクライナを離れた。
カテリーナさんの夫、菊地崇さん(28)は「(義理の母親であるイリーナさんにとって)母国の政情不安で精神的に辛い中、言葉の不安、仕事への不安があったが、日本では受け入れの段階から暖かく接してくれた。しかし皆さんへ感謝の気持ちを伝えたくても、言葉が通じずもどかしい思いだった。そこで思いついたのがウクライナの家庭料理という『食』を通したコミュニケーションだった」と話す。
ウクライナからの避難者には、戦争を止める力はないが「復興する力」はある。こうした思いで、4月にキッチンカーで各地を移動しながらウクライナ料理を販売するプロジェクト「Faina(ファイナ)」を立ち上げた。
5月下旬から毎週末、レンタルのキッチンカーでプレオープン。クラウドファンディングで資金を集め、7月に購入したキッチンカーを使って彦根城前で本格的にオープンし、東京都内でも曜日限定で営業を始めた。
販売したウクライナ料理は、クレープに似たソウルフードで、モチモチの生地にクリームチーズやチキン、シャケを包んだ「ブリンチキ」(400円)とドライフルーツを使った飲料「ウズバル」(250円)。
訪れた30代の女性は「暑い夏、体に優しい味で、モチモチした食感が良かった。まさかこの時期まで軍事侵攻が長びくとは思っていなかった。『何か支援をしたい』と思っても、なかなか行動に移せなかったが、こうした形でサポートできたことが嬉しい」と話した。
小学5年の長男も「(軍事侵攻が始まったころは)、何が起きているのかわからなかったけど、最近になって大変なことになっているのがわかったし、学校でもウクライナの話題になる。早くみんなが楽しく暮らせる(平和な)世界になってほしい」と願った。