二十四節気の「立秋(8月7日)」が過ぎ、厳しい暑さの峠を越す「処暑(しょしょ・8月23日)」を迎え、暦の上では秋となったが、2022年の夏は猛暑の影響でマリンレジャーがまだまだ盛ん。しかし、ちょっとした不注意や油断から大事故に至るケースもある。
近畿・四国の海を管轄する第五管区海上保安本部(※五管本部・神戸市)の管内では、2021年のシーズンに比べ船舶事故と人身事故はいずれも減少傾向にあるが、見張り不十分による船舶事故が発生し、遊泳中の死亡事故や水上オートバイの事故は絶えない。しかし、1つ1つをみれば「防ぐことができた事故」といえる。
8月11日正午前、垂水漁港沖(神戸市垂水区平磯)約2キロの海上で、プレジャーボートが転覆、乗っていた兵庫県神戸市や尼崎市に住む30代~40代の男性3人が別の釣り船で救助された。男性らはいずれも釣りをしていて海に投げ出された。
神戸海上保安部によると、男性らは「船が相次いで(自分たちが乗る船の)近くを通って波が起きて浸水し、その後海に投げ出された」と説明していたという。
3人はボートにしがみついていたところ、近くを通った釣り船の男性に救助されたという。3人はライフジャケット(救命胴衣)を着けていてけがはなかった。
行動制限がなく、3年ぶりに多くの人がマリンレジャーを楽しむ夏となったが、神戸海上保安部は「海上のルールを守り、安全のために船の周囲を見渡す余裕を持ち、『譲り合い』と『無理をしない』ことが大切」と指摘する。
また20日未明には、和歌山県串本町の潮岬沖(紀伊大島の南約3・5キロ)を航行していた岡山県の海運業者所有のケミカルタンカー(595トン、乗組員6人)と、ベリーズ共和国籍の貨物船(2972トン、乗組員14人)が衝突した。貨物船は浸水して傾いたが、負傷者はなかった。
貨物船の乗組員は全員中国人。損傷による沈没の恐れがあったため、14人中11人は巡視艇が救助したが、船の傾きを修正するため、3人が船内にとどまって作業を行った。貨物船から油が流出したが、串本海上保安署の巡視船が除去作業に当たり、付近沿岸への漂着は免れた(油はのちに揮発)。
ケミカルタンカーは神戸港から茨城県の鹿島港へ航行中で、積み荷はなかった。
深夜の事故だったが、周辺の海域の波の高さは約1メートルで視界は良好だったという。串本海上保安署が事故原因を調べている。