ハロウィンイベントを目前にした29日夜、韓国・ソウルの繁華街、梨泰院(イテウォン)の路上で多くの人が押し合って転倒し、日本人女性2人を含む150人以上の死者が出た事故を受け、兵庫県明石市で2001年に花火大会の見物客が歩道橋上で転倒し、幼い子どもを含む11人が死亡した事故の遺族、下村誠治さん(神戸市垂水区)は「韓国であっても、日本であっても、こうした悲しい事故が起きないよう、油断することなく、さらなる安全対策を講じるべきだ」と警鐘を鳴らす。
そして、「(日本)政府には、犠牲になった日本人の遺族へ息の長い支援を求めたい」と話した。
事故で当時2歳の次男を亡くした下村さんは、 歩道橋事故発生のメカニズムを踏まえ、当日の警備体制のあり方を追及し続けてきた。事故から21年が経った今年(2022年)の7月21日、下村さんは事故現場のJR山陽本線・朝霧駅歩道橋で、ラジオ関西の取材に対し「コロナ禍での行動制限が緩和されて、イベントが増えること自体は否定しない。しかし、あらゆるところで時間のブランクがあっての開催ということになると、警備体制ひとつ取ってみても改めて確認すべきことは多いはず。行動規制がなくなることは、何でも自由に動けることではない」と危惧感を抱いていた。
下村さんは、2022年4月に起きた北海道・知床半島沖の観光船沈没事故に関して、国土交通省・公共交通事故被害者支援室アドバイザーとして、乗客の家族らの相談相手を務めている。
梨泰院(イテウォン)の事故現場にいた市民らの多くは「急な坂の路地で、人々がドミノ倒しのようになった」と証言しているという。この状況は、歩道橋事故で起きた群衆雪崩(ぐんしゅうなだれ)とも状況は重なる。
事故原因の究明はこれからだが「まさか自分がこんな事故に巻き込まれるなんて、これは皆さんが思うこと。さまざまな事件・事故は自分で防げないこともある。 そして被害者や遺族を長期にわたってバックアップしていくことも必要だ。心のケアも重要」と話す。
※群衆雪崩(※ぐんしゅうなだれ)1平方メートルに10人以上の高い密度で、誰かが転倒すると、その上に雪崩を打つように次々と人が折り重なる現象。
【明石歩道橋事故】
2001年7月21日午後8時45~50分ごろ、兵庫県明石市の花火大会会場の大蔵海岸と最寄りのJR朝霧駅を結ぶ歩道橋で発生。殺到した見物客が折り重なるように転倒し(群衆雪崩)、0~9歳の子どもと高齢者計11人が死亡、247人が負傷した。