塩野義製薬(本社・大阪市中央区)は、開発中の新型コロナウイルスのワクチンについて、遅くとも2022年中に厚生労働省に承認申請する。10月31日に発表した。
2020年に臨床試験(治験)がスタートし、2022年3月末までの申請を目指していたが、治験の遅れや量産体制の確立に苦心し、申請時期を遅らせていた。
その後2022年10月、イギリス・アストラゼネカ社のワクチンと比較して、ウイルスの働きを抑える「中和抗体」の値が高いとする結果が得られたため、申請に踏み切るという。
承認されれば、国内の製薬会社による初の国産ワクチンとなり、 新型コロナの変異種・オミクロン株にも対応する成分を混ぜた「2価ワクチン」の準備も進める。
塩野義は実用化の時期について明らかにしていないが、最終的にインフルエンザとの混合など呼吸器ワクチンとして定期的に打つことができるワクチンを目指す。製品は包装1個当たり2人分で、小規模の医療機関の場合であっても、多くの対象者を募らず、1~2人そろえば接種できるという。
日本は新型コロナウイルスのワクチン開発で、世界に大きく出遅れた。ベンチャー製薬企業「アンジェス」(大阪府茨木市)は、2020年3月から大阪大学などと共に新型コロナウイルスの従来株に対応するワクチンの開発に乗り出し、国内メーカーとして初めて臨床試験を行ったが、十分な効果が確認できず、ワクチンの開発は断念した。今後は、BA.5などの変異株に対応する新たなワクチンの開発に取り組むという。
一方、塩野義が開発し、「緊急承認制度」に基づく承認を求めている新型コロナ対応の経口薬(飲み薬)「ゾコーバ錠」については、最終段階の治験結果を受け、厚生労働省で改めて審議されている。
塩野義は「体内ウイルスを減少させる効果は、すでに承認されている(アメリカ・ファイザー社、メルク社の)の飲み薬と比べて強い。感染拡大“第8波”への不安が高まる中、一日も早く提供できるようにしたい」としている。