先週開幕したWBC。日本代表は無事1次リーグを突破することができました。今この瞬間、いちばん熱いスポーツと言える野球ですが、全く知らない人からすれば少々ルールは複雑であり、また、定期的に何かしらのルールの改正も行われています。
例えば、メジャーリーグで今季から追加されるのは試合時間の短縮を目的とした「ピッチクロック」というルール。投手は球を受け取ってから投げるまでに規定の時間内に投球を行う必要があり、このルール改正に批判の声も集まっています。
野球のルールは国や年代によって変わることがあるものの、概ね共通しているのが「9回制」というルール。「野球は9回2アウトから」という名言もありますが、なぜキリの良い10回などではなく「9回」なのでしょうか? 米野球史に詳しい名城大学・鈴村祐輔准教授に話を聞きました。
鈴村准教授によると、野球はもともと“21点先取制”だったとのこと。
「1856年まで、野球は先に21点を取った方が勝利というルールでした。3アウトで攻守交代というのは現在と同じなのですが、どちらかのチームが21点を取らなければ何イニングも続くというルールだったのです」(鈴村准教授)
しかし、このルールを邪魔していたのが“日没問題”。
「当時は球場に照明設備が整っておらず、あまりに試合が長引き日が暮れるとプレーが困難になってしまっていました。また、当時の野球は“社交の一環”として楽しまれており、試合後には打ち上げとして食事会をするのが定番でした。この打ち上げの開始時間がバラバラになってしまうのも当時の懸念点だったようです。このことは食事を用意するコック達にも影響が及ぼしました。シェフから『何とかしてほしい』とクレームが上がることもあったといいます」(鈴村准教授)
そこで考案されたのが回数で区切る“イニング制”。現在の野球のルールにもつながる原型を作ったアレクサンダー・カートライト氏を中心とした話し合いが行われた結果、1857年、21点先取制からイニング制へ移行することになりました。
では、イニングが“9回”とされた理由は何だったのでしょうか。
「当時の21点先取の試合では6回で終了することが多かったそうです。この6回を中心として考えることになり、当初カートライト氏はこの6回にプラス1回を加えた“7回制”を提案しました。ただ、このほかに出された案がありました。それが、6回からバッターが一巡する“9回制”だったのです。会議の結果、カートライト氏が提唱した7回制は支持されず、多数決により“9回制”が採用されました」(鈴村准教授)