先日、老舗喫茶店を訪れたときのこと。香り高いコーヒーを飲んでいたところ、ふと気になったのが、コーヒーカップの下に置かれている「ソーサー」。
近ごろは、カフェなどでもマグカップや紙カップが使用されていることが多く、そのまま手渡されるかコースターの上に置かれていることがほとんど。ソーサーを目にする機会が減ったこともあり、ふと気になったんですよね
「マスター、このお皿ってどうしてついてるの?」とカウンターに立つマスターに投げかけてみたところ、逆に「このお皿の意味を当てられたらもう1杯ごちそうするよ」と言われてしまい……。必死になって考えてみました。
「そら、スプーンやスティックシュガーを置くためとちゃいますん?」
この渾身の回答に対して、マスターは「う〜ん、今現在“は”な……」とひと言。思わず「今現在“は”ってことは、本来は違うってこと?」と聞き返してしまいました。
すると、マスターは詳しく説明してくれました。
その昔(18世紀ごろ)ヨーロッパの方では、カップからソーサーにコーヒーを注ぎ、ソーサーに口をつけて飲むのが一般的だったのだとか。この言葉を聞いた私は、すかさず「え〜っ、それほんまなんですか!? なんのためにそんなことをするんですか!?」と反応。
マスターいわく、昔の西洋人は猫舌な人が多く、コーヒーも熱々のまま飲むのが苦手だったそう。さらに「一旦、カップからソーサーに移すと少し冷めるやろ。つまり、冷まして飲むために移し替えていたそうや。その名残がこのお皿、ソーサーやねん」と、ウソみたいなほんとの話を聞かせてくれました。
さらに「まあ、今はスプーンやスティックシュガーを置くためというので半分正解やから、もう1杯ごちそうするわ」と言ってくださいましたので、私はこのように返しました。
「じゃあマスター! せっかくやから本来の飲み方で飲んでみますわ!」