住友ゴム工業株式会社(本社・神戸市中央区)が、 地震の揺れをゴムによって吸収する住宅用制震ダンパー「MIRAIE(ミライエ)」と同じ技術を使用し、歴史的建造物を地震から守り、後世に残すための保全プロジェクトを展開している。「MIRAIE」 は東日本大震災の翌年、2012年に販売を開始、2022年に10年を迎えた。
過去30年間で阪神・淡路大震災、東日本大震災などを経験した日本では、2050年までに南海トラフ巨大地震が70~80%の確率で起こるとされている。
住友ゴムの調べによると、最大震度7を2度観測した熊本地震(2016年)、震度6弱の大阪北部地震、震度7の北海道胆振東部地震(いずれも2018年)など、2016年以降の最大震度6弱以上観測の地震で「MIRAIE」を装着した住宅の半壊・全壊はなかったという。 ※記事中写真・図は住友ゴム工業提供
こうしたことから、2017年から5年間行われた熊本城天守閣の耐震改修工事でも 「MIRAIE」にも使われている制震技術が導入され(制震ダンパーを採用)、大天守の最上階、小天守の最上階に設置された。その後に起きた福島県沖地震(2022年)でも、住宅などに「MIRAIE」を使用している顧客から全半壊の報告はなかった。
そして2022年12月、書写山円教寺(兵庫県姫路市)の「法華堂」に、「MIRAIE」に使われている制震ダンパーの導入工事を行った。「法華堂」は圓教寺に点在する塔頭(たっちゅう)のひとつで、創建は平安時代の985(寛和3)年。現在のものは、建物、本尊ともに江戸時代の造立とされている。
このほか、世界最大級の木造建築として知られる京都・東本願寺の耐震補強工事などでも「MIRAIE」と同じ制震技術が採用されている。
大掛かりな装置や道具を必要とせず、建物をほとんど傷つけることなく、後付けで簡単に設置することができるという。
2017年に京都大学防災研究所で行われた「MIRAIE」の実証実験では、建物の揺れ幅を95パーセント軽減したという。
住友ゴムハイブリッド事業本部・松本達治副本部長は、円教寺・法華堂への設置を皮切りに、地震からあらゆる建築物を守るためにサポートしたいとしている。
また、円教寺・大樹玄承第141代長吏(住職)は「法華堂では今でも月に1度、法要を行っており、次の時代へ残していかなければならない重要な祈りの場。建物への影響を最小限にとどめながら耐震化することは、我々の大きな課題であり、今回の取り組みは大事な一歩だ」と話した。