演劇と観光を専門的に学ぶことができる公立大学『芸術文化観光専門職大学』(兵庫・豊岡市)が開学して2年。日本全国から集まった学生らは、地域に溶け込みながらそれぞれの“表現”を模索しているようだ。同大学の学長でもあり、劇作家・演出家の平田オリザさんがパーソナリティを務めるラジオ番組(ラジオ関西『平田オリザの舞台は但馬』)に、同大学1年生の柳田あやなさん、仁平美月さんが出演。3月17日(金)、18日(土)に豊岡劇場で行われる公演について語った。
柳田さんは岩手県出身。演劇経験はなかったが、同大学に興味を持ち入学を決めたという。一方、仁平さんは秋田県出身。市民参加型ミュージカルで活動するなど、高校性のころから演劇に親しんでいたそう。そんな2人は今、大学のメンバーらと共に新たな表現形式を模索している。
「(大学のメンバーらと)『演劇はほかの芸術よりも形式が固定化している』という話になった。“劇場”という箱のなかで、見る側と見られる側に区別されるような“形式”を少しずらしてみたら面白いものが生まれるんじゃないかということで、意図的に『劇団』とは名乗らずに『集団ばく』として活動しています」(柳田さん)
『集団ばく』は学外へも飛び出し、活動を行っている。これまでに新温泉町にあるスーパーマーケットの一角や、休館中の映画館・豊岡劇場で、学生らが作った詩や絵、料理などをお金やモノ、言葉と「交換・贈与」するパフォーマンスを行った。大人から子どもまでそれぞれが空間に身を委ね、身の回りの出来事を語り合う場が生まれるなど好評だったそうだ。
「実は最近、私たちの活動に興味を持ってくださった地域の方が『参加したい』と申し出てくださって。60代くらいの方なのですが、地域の方と創りたいと思っていたから本当にうれしくて」(柳田さん)
「メンバーは現在、6人プラス8万人(豊岡市の人口)! いつの間にか、私たちの活動に取り込まれているはずです(笑)」(仁平さん)
3月17日(金)、18日(土)には豊岡劇場の施設内を巡りながら、さまざまな体験をしていく参加型上演を行う。「家」を構成するものを持ち寄り、「父」「娘」など家族を構成する役割にとらわれない「帰る場所」の創出を試みる。
平田さんは「学長(私)の知らないところでいろいろなことが起こっていますね(笑)。秋田公立美術大学の藤(浩志)先生が、子どもを対象にいらなくなったおもちゃを交換するというインスタレーションをされています。ほかの事例もいろいろ研究してみるといいですよ」とアドバイス。学生らの試みはまだ序章だ。
※ラジオ関西『平田オリザの舞台は但馬』2023年3月16日放送回より
◆集団ばく公演『Anima〈とばりと母型〉』
【公演詳細ページ】
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『平田オリザの舞台は但馬』
放送日時:毎週木曜日 13:00~13:25
放送局:ラジオ関西(AM 558khz / FM 91.1mhz)
パーソナリティー:平田オリザ、田名部真理
メール:oriza@jocr.jp
『ラジコ』では放送後1週間はタイムフリーでの聴取が可能。番組では、平田オリザさんが、ともにパーソナリティーを務める田名部真理さんと、これまでの自身の話しや演劇界への思い、移住拠点となっている兵庫・豊岡、但馬地域について、トークを進めていく。