時代の先端をいく海外のファッションブランド。現在では日本でもおなじみの、ブルガリ、フェンディといったヨーロッパの一流ブランドの数々を日本で広めた会社が、兵庫県神戸市にある。『株式会社アオイ』(神戸市中央区)だ。ブランドという概念が日本にない時代に、すでにその価値を見極めて輸入を行っていた先見性や、時代とともに変化するニーズやネット時代のファッションビジネスについて、同社の販売本部営業部・中村友宣さんに話を聞いた。
アオイは、1950年の創業当時の精神を貫きながら、現在もヨーロッパの高級ブランド衣料・雑貨を取り扱う。創業当時は高度成長期。ヨーロッパから輸入したものは一般的に「舶来物」というくくりで扱われていた。日本では「ブランド物」という感覚はほぼ存在しておらず、“驚くような高級な品物”という認識だったそうだ。同社はブランド物が持つ上質な素材感・デザイン性や真の価値を見極めセレクトし、「良い」と判断した商品だけを顧客へ販売していった。社名はこの「ALL ORIGINAL IMPORTS」の精神から、頭文字をとってaoi(アオイ)とされた。
2020年、新型コロナウイルスが広まった初期は販路である百貨店や商業施設がいっせいに休業。これまでに経験したことのない事態に陥り、売り上げは相当な打撃を受けたという。
「新たな一手を……ということで、当時は着手していなかったネット販売を始めました。数年経過し、なんとか形になりかけているところですね。顧客の年齢層がやや高めということもあり、当初はネット販売が受け入れられるかどうか不安はありましたが、今ではスマホをお持ちの方も多く気軽にアクセスしてお買い上げいただいている状態です」(中村さん)
とはいえ他社のショッピングサイトの話を聞いていると、まだまだ自社サイトは発展途上と感じるそう。ネット戦略に長けている企業は実店舗とうまくリンクさせながら売り上げを伸ばしていると分析する。「画面の中だけで商品を選ぶのは不安がつきまとうもの。やはり実店舗との連携が大切だと考えます。当社のサイトは未熟な部分も多いので、改修しながら新しいカタチで会社の未来を創造していきたい」と中村さんは意気込んでいる。
中村さんは、他にも自社が直面している課題として“商品の高額化”を挙げた。円安に加え、日本の物価上昇率がヨーロッパに比べて低いという点が理由だという。このままだとインポートブランドは富裕層のためだけのものになってしまう可能性を懸念する。「日本の物価上昇や賃金の上昇がともなってくれば、ヨーロッパの人々と同じような感覚で日本人もインポートブランドを楽しむことができるようになります。しばらくは踏ん張りどころですね。当社が努力することで、広く皆様にブランドを愛してもらえるような形にもっていけたら」と語った。
同社が現在メインで扱っているブランドのうち主力3ブランドについて、中村さんに解説してもらった。
【FABIANA FILIPPI(ファビアナフィリッピ)】
「カシミアを中心としたブランドです。1985年、イタリアのウンブリアでフィリッピ家のマリオとジャコモ兄弟により創業されました。 上質な素材にこだわり、高い職人技術による丁寧なものづくりをしています」(中村さん)