「花・生命・春」をテーマに、日本全国から招待した若手から中堅、ベテランのアーティストによる現代アートの作品展「オマージュTAKARAZUKA―春 プリマヴェーラ」が、宝塚市立文化芸術センターで開催されている。2023年5月7日(日)まで。
プリマヴェーラは「春」を意味するイタリア語で、ルネサンスの巨匠サンドロ・ボッティチェッリの代表作「春 プリマヴェーラ」から着想した。宝塚市立文化芸術センターはこの春、開館3周年を迎えた。コロナ禍で、展覧会の中止や延期が相次いだアートシーンだったが、「長い冬を耐えて春を迎える時、すなわちコロナ禍に耐えて新しい世界を迎える日を夢みる、今日に向けた展覧会だ」と、同センターの加藤義夫館長は言う。
会場には12人のアーティストたちの作品が並ぶ。
川口奈々子さんの「Nature in the girl / Spring 2023」は、たくさんの色が使われ、いろいろなものが描かれている。「内面に抱えている見えないものは見えにくい。流れるような、何かが溶けたような表現をカモフラージュにいろいろな可能性をとじこめた」といい、「いつもよりビビッドな作品になった」と話す。
「素材を集めるのが好き」という荒木由香里さんの「RED」。真っ赤なハイヒールといろいろなものが共演している。「ハイヒールは女性の靴としてそれだけでも美しいが、不安の多い世界で美しさと強さを表現した」という。「リボンの騎士」が好きで、「宝塚の舞台のイメージ」も盛り込んだ。同作品にはリボンも使われている。
「あなたがいた気配、そこに花を」。「このタイトルが重要なんです」と話すのは福田良亮さん。3年前に母親が「僕の誕生日の僕が生まれた時刻に亡くなり、それ以来、母親が好きだった花や金魚を描くようになった」という。10代の頃から変わらず使っているという紫色は「油絵の具を見た時に不思議な感覚になりピンときた」から、本作でも使っているそう。
6年前に信州に移住し、暮らしの中ででた薪の灰をすき込んだ和紙を使った作品を展示しているのはmariane maiko matsuoさん。厳しい冬を終え迎える春の喜びを、白と黒の中に色彩への想いとして詰め込んで表現した。作品の上部にあるのは山葡萄の蔓。これも生活の一部だという。
青木恵美子さんの作品は、立体的な筆の跡が花びらのように見える。「光、影、色。作品を見る角度によって変化が感じられる。色は光であり生命の象徴。生命感を感じてほしい」と話す。
「冬を終えて春が来る。春の力強さ、芽吹くイメージを表現した」という柴田知佳子さん。「確かにここにいる」という思いを込めて、タイトルは「Be」とした。今回の出品アーティストの中で唯一宝塚在住で、「花や桜ではないアプローチがあってもいいのではないか」と話す。2点の作品を1点1点見てもいいが、「人という文字は2つで支えあうような形。2点から何かを感じ取ってもらえれば」という。
加藤館長は、「宝塚を新たなアートの聖地にという思いを込めて、宝塚へのオマージュ(捧げるもの)を形にした現代アートの祝祭を楽しんでほしい」と話す。また、会期中は、同センター内の庭園でバラやスミレ、ダリアなどが花を咲かせる。展示会場の外でも「花・生命・春」を満喫できる。