大阪の地でオープンし、今年で11年目を迎えるピロシキ専門店「Kentauros(ケンタウロス)」。そのピロシキは、いまや通販および関西の百貨店での催事などで人気の一品だ。しかし、お店が軌道に乗るまでは苦難も多かったというのは、同店の代表を務める中川千鶴さん。17日放送のラジオ番組で、これまでの苦労話やターニングポイント、今後の展望などを語った。
「専業主婦歴12年から、ある日突然ピロシキ専門店をやろうと思った」と、中川さん。その契機となったのは、中川さんの父の十三回忌での出来事だ。
「父の十三回忌があった日、遅れてきた兄が『露店でピロシキ売ってたで』と買ってきたんです。父の大好物だったこともあり、懐かしくて思い出話をしていたら、副業でたこ焼き屋をしていた兄が『(自分の店で)ピロシキを出したいから手伝って欲しい』と言ってきたんです。最初はレシピ作りから始めて、次第に私ひとりで楽天市場(通信販売)で販売するようになったところから(ケンタウロスが)始まりました」
現在は大阪に拠点を構え、定番の神戸風ピロシキ「白ピロ」やスパイシーな「赤ピロ」のほか、バラエティー豊かな創作ピロシキを製造・販売し、人気を博している。
しかし、お店を立ち上げてからの3年間は、かなり厳しい道のりだったそう。
当初、エントリーした楽天市場の人気グルメが集結する一大イベント「楽天うまいもの大会」でノミネートされたり、テレビにも取り上げられたこともあったケンタウロス。「周囲からも『ここからはポーンと(人気が)上がるよ』と言われていましたし、担当者と面談して1日に作れる数が100個だと答えたときに『それだと瞬殺(で売り切れ)だから、なんとかして欲しい』とも言われていました」(中川さん)。
そのため、「最初は住んでいた家を改造して中華鍋で具をつくってという状態から、ミキサーやIHの煮炊きかくはん機など、そういうのを数か月の間に全部買いそろえて、1日に何百個もつくれるような体制をつくった」と、急きょ、現在の工房を建てた中川さん。ところが、同イベントが終わると、やってきたのは「何もない日常」だった。
催事が頻繁にないが、いざというときのためにパートスタッフは確保しなければならない。出店時はピロシキを多く作らなければいけない。そうすると毎日ピロシキが仕上がり、冷蔵庫もいっぱいになる。ほかの大きなイベントに出向いてもパン系は1個食べればお腹がいっぱいになるので、なかなか売れない……。
そんな悪循環に陥ったことで、「赤字が続き、家の預貯金がなくなり、借金まみれになった」。苦しい経営状況が4年目に突入した頃には販売を委託していた催事担当者からも「ピロシキは儲からへんからやめるわ」と、さじを投げられた。さすがに当時は限界にきていたという。「私のせいで家族中に迷惑をかけた。ある日の思いつきでこんな泥沼にはまってしまって……そこで1回やめようと思った」。
それでも、他の催事委託スタッフからの「このピロシキ、絶対売れるから。中川さんのところで直接雇ってよ」という声を受けて、もう一度チャレンジしてみようと立ち上がった中川さん。そこで大きな力となったのは、“お客様の声”だった。「いろんなレビュー(意見)をもとにピロシキを改善していった」と、サイズや風味、パッケージなど、できる限りの創意工夫を展開。そのうえで、百貨店へ積極的に売り込むことで、中川さんいわく、「そこからケンタウロスの快進撃が始まった」。
世に知られるターニングポイントとなったのは、阪急うめだ本店で行われた「第2回阪急パンフェア」への出店。そこでピロシキの味が認められて話題を呼び、「行列ができた」ことで、その後は、催事担当者からの扱いが一変した。「今までは現場に行ったら『ケンタウロスはそこ!』みたいな感じだったのが、『阪急パンフェアに出られたケンタウロスさんですね』と。『出ていただけますか』と言葉も変わりました」(中川さん)。
数々の苦労を乗り越えた今、中川さんは改めて「お客様の声は本当に大事」と語る。「(それまでは)自分のつくったピロシキはおいしいと思いこんでいた。改善はまだまだできたということ」。
今後の「ケンタウロス」について、20歳になる中川さんの長男が、自ら同店の後継者に名乗りをあげたという。「今まで機械化・工場化してフランチャイズを作って全国展開したらどうかという話もあったが、1回へこんだ経験があるので、今からまた(挑戦するのは)しんどくて断っていた。でも、息子が継ぐなら……」と、中川さんのピロシキが全国展開される夢も開けたよう。
長男の意向を受けて、ゆくゆくはUAE(アラブ首長国連邦)のドバイへの出店を目指す野望も語った、中川さん。かつて美魔女コンテストでファイナリストになった経験を持つ、関西屈指の美魔女経営者は、「最後に1ついいですか?」と放送終了直前にコメント。「私の父親の名前がケンタロウで、私の携帯には父の携帯番号を『ケンタウロス』で登録していた。父の思い出のピロシキなので、ウチの店の名前は『ケンタウロス』と言います!」と、店名の由来を明かした。
※ラジオ関西『としちゃん・大貴のええやんカー!やってみよう!!』2023年4月17日放送回より。
◆ピロシキ専門店「Kentauros(ケンタウロス)」
【公式HP】