昭和を代表する洋画家、小磯良平(1903~1988)が描いた肖像画を集めた展示「KOISOポートレートミュージアム 肖像画の終結&兵庫県内めぐり」が神戸市立小磯記念美術館(同市東灘区)で開かれている。7月2日(日)まで。(※イベントは終了しました)
小磯といえば、モダンで美しい女性の画が思い浮かぶが、社会的地位のある人物から依頼され、肖像画を手掛けることもしばしばあったという。同展では、日頃公開の機会が少ない肖像画に加え、代表作や貴重なデッサン、ゆかりの画家たちによる兵庫県内を舞台とした風景画など計114点を紹介している。
目玉の1つは、神戸市長を5期20年務めた宮崎辰雄さん(1911~2000)の肖像画。「神戸ポートアイランド博覧会」(1981年)の前年ごろの作品で、スーツに身を包み、穏やかな微笑をたたえている。横には1962年に描かれた妻の喜美子さんの画もあり、凜とした表情と和服姿が印象的だ。
兵庫区で会社を営んでいた長田大介さんと妻のはまさんを描いた「長田夫妻の肖像」(1954年)も画の2人は隣同士に並ぶ。大介さんは当時76歳、鋭い眼光と椅子に腰掛けた貫禄のある物腰が、いかにも経営者らしい。73歳のはまさんも自信がにじむ表情で、はっきりと描かれた白髪、額のしわが豊かな人生経験を想像させる。
そのほか、大阪で陸軍から初めての特攻隊員となった、谷川昌弘さんを描いた「故谷川大尉像」(1944年)なども。小磯は大阪市からの依頼で、写真を基に肖像画を制作したという。
「兵庫県内めぐり」の部屋には、小磯の「淡路イザナギ神宮」(1954年)、元川嘉津美「神戸ポートタワー」(1963年)などが並び、なじみ深い場所の昭和の風景を楽しめる。
金井紀子学芸員は「(小磯の肖像画は)顔かたちの特徴をうまく捉えているのはもちろん、日本人の肌のリアルな質感を描き、西洋美術史におけるオーソドックスな肖像画としてまとめているところに実力が出ている。研鑽を重ねていたデッサンにも注目してほしい」と話している。
◆コレクション企画展示/小磯良平作品選Ⅰ「KOISOポートレートミュージアム 肖像画の終結&兵庫県内めぐり」
会場:神戸市立小磯記念美術館 〒658-0032 神戸市東灘区向洋町中5丁目7
会期:2023年4月21日(金)~7月2日(日)
開館時間:午前10時~午後5時
休館日:月曜
入館料:大人200円、大学生100円
問い合わせ:同館078-857-5880
小磯記念美術館 https://www.city.kobe.lg.jp/koisomuseum/