AIの躍進により職業自体がなくなるのでは、と話題に上がる業種がある。税理士や会計士などの“士業”もそのなかのひとつだ。このたび、AIに駆逐されることなく、むしろAIやITを味方につけ躍進することで事業主への利益還元を考える税理士法人グループの代表がラジオ番組にゲスト出演。今年導入されたインボイス制度の話題にも触れつつ、自身が目指す業界像を語った。
ラジオ番組『セケンテー/ぼくらは囚われない』(ラジオ関西)の2023年3月30日放送回に出演したのは、サン共同税理士法人でCEO(代表社員)を担う、朝倉歩さん。日本最大級のビジネスグループであるデロイト トーマツ グループの税理士法人で12年の実績を積んだのち、当時のメンバーを引き連れて独立した“税のプロフェッショナル”だ。
2016年の独立と同時に立ち上げたサン共同税理士法人は今年で8年目を迎え、今や全国に10の拠点を構える。会計事務所運営の独自ノウハウ(集客・採用・IT)を活用した全国の会計事務所とのM&A(統合)、拠点開設とWEB集客を強みに、年々規模を拡大している。法人・個人を問わず関わりの深い「税」に関する話題で、場は大いに盛り上がった。
海外に比べ、日本の税計算は非常に複雑だ。そのため、会社の規模にもよるが、起業のタイミングから税理士を顧問として雇用することが多い。朝倉さんによると、起業間もない会社では利益のない段階から顧問料が発生してしまう事態が起こり、P/L(損益計算書)内で最も大きな経費が税理士顧問料になってしまうことも多い。これについて、朝倉さんは「利益がないなかで何十万という顧問料を支払うのはなかなかにインパクトがある」と語った。
パーソナリティのセオは、「節税」に意識が向き、本来の目的(利益を伸ばすこと)に反する悪循環が起こっている現状について苦言を呈した。
これに対し、朝倉さんは「本当にその通りで……」と同調。この悪循環の改善を目指しているそうで、「チャットGPT(アメリカのOpen AI社が開発した、人工知能(AI)を使ったチャットサービス)などを活用したりして、デジタルな業界に変えていきたい」と語った。
現に朝倉さんのグループでは、訪問や領収書を1枚ずつ確認して入力して……という作業をデジタルにすることで人的・時間的なコスト構造を改革し、月5000円〜1万円程度からの顧問も可能だという。
番組では“インボイス制度(適格請求書等保存方式)”の話題も上がった。セオからの「賛成ですか? 反対ですか? 」という問いに、朝倉さんは「税理士側からすると、インボイス制度を導入するだけで会計事務所の負担が大袈裟に言うと1.5倍になったりする。そうなると結局、会計事務所負担の費用を小規模事業者に負担させなきゃいけなくなる、というところが現実問題ですね」とリアルな課題を語った。
インボイス制度の仕組みそのものも複雑だが、アドバイスやシミュレーションも顧客ごとに変化する。ここでもテクノロジーを駆使したシステム化による検証が重要になりそうだ。海外からは「日本の税金が参入障壁だ」といわれるほど国内には多種多様な税金が存在するため、朝倉さんは「よりシンプルな形に改善する必要がある」とも考えているという。
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『セケンテー/ぼくらは囚われない』
放送日時:毎週土曜日 20:00~
放送局:ラジオ関西(AM 558kHz / FM 91.1MHz)
連続起業家兼アーティストのCEOセオとフリーアナウンサー田中大貴がパーソナリティを務める。