缶コーヒーを飲む際、振ってから開栓しますか? 振らずに開栓しますか? 最近の缶コーヒーには「よく振って下さい」と書いてあるものの他に「軽く振ってから」「振らずに」など、商品によってさまざまな“指定”があるようです。
「振って開ける缶コーヒー」と「振らずに開ける缶コーヒー」の違いについて、大阪市に本社を置く飲料メーカー・ダイドードリンコ株式会社コーポレートコミュニケーション部の野口真希さんに聞きました。
缶コーヒーを開栓する前に振る理由は、時間の経過と共に沈殿するミルクや砂糖などの成分を均一にするためだといいます。開栓の前に振ることで、味にムラができることを防ぐ目的なのだそうです。ただし、これは硬くて丈夫な素材のスチール缶に入った缶コーヒーの場合。アルミ缶や環境に配慮した薄いスチールで生成した「タルク新型缶」を使用した缶コーヒーの場合、柔らかい素材で作った容器の強度を保つため窒素を充填して缶に張りを持たせています。そのため振った直後に開栓すると、中身の液体が泡立ち窒素ガスと共に噴き出す恐れがあるそうです。
最近よく見かけるキャップ付きのボトル缶にも、おいしさを保つために窒素ガスが入っていることが多いといいます。開栓する際には「ベントスリット」と呼ばれるキャップ側面の小さな切込みからガスが逃げ出す構造になっています。このタイプの缶は、振ってしまうとガスと中身が混ざり、ベントスリットからコーヒーが噴き出す可能性があるので、振らずに水平にしてゆっくりと開ける必要があるということでした。
かつて、軽く柔らかいアルミ缶は内部の圧力が高くなる炭酸飲料や窒素充填された果汁飲料などに多く使用され、強度が高く丈夫なスチール缶は高温・高圧をかけて殺菌するコーヒーなどの飲料に使用することが多かったようです。しかし現在は技術の進歩により、コーヒーにもアルミ缶の使用が可能となるなど、容器使い分けの制限が徐々になくなってきているといいます。
野口さんによると「おいしく安全に飲んでいただくために、缶コーヒーを開栓する前は必ず注意書きを確認して下さい」とのことでした。
(取材・文=村川千晶)