「蛙化現象」という言葉をご存知でしょうか? Z世代と呼ばれる10代から20代半ばの若者たちの間で広がる、「好意を抱いている相手が自分に好意を持っていることがわかった途端、相手に対して嫌悪感を持つようになってしまう」という現象のことを指すそうです。
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蛙化現象という言葉は、もともとは2000年代に使われ始めた心理学用語だったと言われています。王女から気持ち悪いとあしらわれていた蛙が王子様の姿に変身し、ハッピーエンドを迎えるという内容のグリム童話『カエルの王子様』が由来で、恋愛においての“突然の心変わり”を表す言葉として生み出されたといいます。
しかし最近では、その使われ方は変化しつつあるようです。相手からの好意の有無や恋愛というシチュエーションに関係なく、一方的に好意を寄せいていた相手の言動で幻滅した時や熱が冷めたとき、それまで夢中になっていたアイドルやコンテンツなどに対して興味を失ったといった場合にも「蛙化した」などと言うことがあるそうです。
ことし6月、若者に人気のスマホ用キーボードアプリ「Simeji」を運営するバイドゥ株式会社が発表した「Z世代が選ぶ『蛙化現象あるあるTOP10』」では、10代から24歳までの男女637人に“蛙化現象が起こるシチュエーション”をアンケート調査しランキングにしています。
ランキングの第1位には「両思いになった瞬間、気持ちが冷める」という本来の意味に近いシチュエーションが輝きました。同社によると、アンケートには「両思いってわかった瞬間気まずくなって冷めた」「好きな人に好きって言われたら満足して好きじゃなくなる」「自分なんかを好きになっちゃうのか……ってなる」など、回答者自身も自分の気持ちがわからず困惑している様子の回答が多数寄せられたといいます。
第9位には、「店員を呼んでも気付かれない」姿を見て蛙化現象を起こしたという理不尽なシチュエーションもランクイン。「見ていて可哀想だから」「普通に気まずくて蛙化する」など、自分が想いを寄せる相手には、何事もスマートにこなしてほしいという理想や願望がアンケートの回答に垣間見えました。相手に対してイメージしていない姿を目にすることで、ショックを受けるZ世代の若者も多いようです。
SNSなどでは蛙化現象という言葉が流行していることついて「ちょっとしたことで幻滅されてしまうなんて怖すぎる」「愛が軽い」といった否定的なコメントがある一方で、「ずっとこの現象で悩んでいたので言語化されてありがたい」「思春期ならではの気持ちの変化をずばり表していて面白い」といった肯定的な声もあがっています。“共感する”または“全く共感できない”エピソードについて、友人や知人と話し合ってみると意外な価値観が飛び出して盛り上がるかもしれません。
(取材・文=村川千晶)