日常生活の移動が不便な状況となっている地域の課題を解消しようと、神戸市は今年4月から垂水区塩屋町の一部地域で、デマンド型乗合タクシーといわれる新たな地域コミュニティ交通の本格運行を始めた。
JR神戸線の塩屋駅から13分ほど歩いたところにある住宅街。坂が多く見晴らしのいい高台にあることから「望海台」と呼ばれるこの地域で、新たに登場したのが、デマンド型乗合タクシー「望海(のぞみ)」だ。望海台地域と塩屋駅・イオンジェームス山店(神戸市垂水区青山台)の2ルートで運行されている。
デマンド型乗合タクシーとは、車両を貸し切ることで乗車賃として借り上げ料金を支払う通常のタクシーとは異なり、バスのように利用者一人ひとりが運賃を支払い、乗り合うことを前提に運行する交通手段。つまり「望海」は、1人分の料金を支払うことで誰でも乗ることができる、タクシー車両を用いたバスだ。
運行ルートが決まっており法律上もバスとしての扱いとなるが、専用の予約サイトまたは電話での予約によって利用が可能。地域と神戸市、そして運行事業者である山陽タクシーが協力して取り組んでいる。
塩屋駅周辺は塩屋コミュニティバス「しおかぜ」が走っているものの、望海台地域は交通安全上の理由で運行できなかった。望海台は住民200人ほどの小さなエリアで、コミュニティバスの運行を支える利用者も限られる。神戸市からのアドバイスもあり、利用者が少なくても成り立つよう予約に応じて運行するデマンド型乗合タクシーという形を選択した。
予約には「孝行デマンドバス」と呼ばれるwebシステムを推奨しており、神戸市の独自改良により予約の入っている便を確認することができる。予約の入っている便に重ねて予約することで乗り合いが成立し、割引運賃が適用される。通常1人450円の料金が、1台に2名の乗り合いで300円に、3名以上で200円となる。
望海台地域内に10か所のバス停があり、利用者の任意の場所での乗降が可能。現在、月30人ほどの利用者がいるという。
「地域の交通課題を解決するため、神戸市はそれぞれの地域の実情に応じた地域コミュニティ交通の導入を推進している」と語るのは、神戸市都市局交通政策課の平野さん。「地域コミュニティ交通を含め、鉄道、バス、タクシーなどの公共交通が充実した暮らしやすいまちになるよう、今後も頑張っていきたい。お住まいの地域で『望海のような地域コミュニティ交通の取り組みをやってみたい』と考えている方は、神戸市役所交通政策課まで問い合わせてほしい」と呼びかけた。
※ラジオ関西『サンデー神戸』2023年7月9日放送回より
【神戸市:垂水区望海台地域におけるデマンド型乗合タクシー「望海(のぞみ)」】
望海台コミュニティバス「望海(のぞみ)」予約サイト
◇『サンデー神戸』
【番組HP】
【アーカイブ記事】