サッカー・J1のヴィッセル神戸は、22日、延期分となるJ1第16節の川崎フロンターレ戦に臨み、2-2と引き分けた。この試合では今シーズン初めて前半に2点を先行される苦しい戦いとなったが、後半に奮起したクリムゾンレッドのイレブンはエースFW大迫勇也選手の2得点で同点に追い付き、勝点1を確保。勝点を44に伸ばし、首位の座をキープして夏の中断期間に入った。その試合後、監督や選手が語ったのは、“軸をぶれさせない”ことの重要性だった。
試合前、ヴィッセルの吉田孝行監督は「いつもどおり、自分たちがやっていることを攻守にやる。暑さもあり、ペース配分も、機を見ながらやっていかなければいけない」と語っていたが、今回の前半では、その「いつもどおり」の展開に持ち込めず、リーグ随一の堅守を自慢とするチームがまさかの2失点と劣勢を強いられた。
「前半に関して、入りから悪くはなかったが、自分たちのミスから失点してしまい、そこから相手が勢いづいたように思う。一人ひとりの“気持ち”というのは前半からあったと思うが、どこかちょっと構えている部分というか、いつものらしさというのはなかったのかな、足りなかったのなと思った」(試合後の吉田監督のコメントより)
これまでは先手必勝がヴィッセルの戦い方だったため、2点先行された時点で、このままズルズルと行きかねない流れだった。しかし、ハーフタイムを挟んで、状況は一変。途中出場のMF汰木康也選手が左サイドを活性化するなど、ホームチームが攻勢に転じると、59分、DF初瀬亮選手の左クロスから得たPKを大迫選手が冷静に決めて1点差に詰め寄る。さらにその3分後には汰木選手の右コーナーキックを大迫選手が相手に競り勝ってヘッドで押し込み、すぐさま同点に。ホーム・ノエビアスタジアム神戸に集った約1万5千人のヴィッセルサポーターが一気に盛り上がり、勢いは完全にヴィッセルに傾いた。川崎Fの反撃をGK前川黛也選手の好セーブでしのげば、終盤には途中出場のDF飯野七聖選手らに決定機も。勝ち越しこそかなわなかったが、それでも勝点1を得たヴィッセルは、強豪相手との差は縮めさせなかった。
「こうやって相手に3を取らさなかったのは大きいと思う。最後まであきらめずにやってくれた選手たちに感謝したい。また次、川崎とはすぐやるので(8月12日にアウェイで対戦)、次は勝点3をとれるように、今日の反省をいかしてやっていきたい」(吉田監督)
前半から後半にかけての変化について、指揮官は、「守備のところは一人ひとりの出足のところと、強度のところを修正した。攻撃の部分では、前半が終わって、もっとしっかりボールをつなげると思ったので、そこでみんながもっとボールをもらいたがるような、顔を出すようなところを意識した。あと、汰木が入ることで、そこでタメができたので、そこで周りが動き出す時間とか、上がるタイミングとかができたのかなと思う」とコメント。
一方、選手たちの前半の反省点についての話をみていくと、異口同音に、吉田監督と同じ課題をあげた。
「突き詰めたら細かいところになるが、自分たちが今までやってきたことはもっと出していかないと、ああいう失点につながる」(初瀬亮選手)
「前半は特に球際だったりプレスというのが行けていなくて、消極的なところがすごくあった」(前川選手)
「前半、自分たちのプレーがあまりよくなく、プレッシャーも全然かからなかった。相手も今日は特に上手い選手がいっぱいいるので、しっかりとプレッシャーをかけて、取りどころを限定してというのが、大事だったかなと思う」(本多勇喜選手)
「(HTの修正点は)チームとしてやるべきことができていなかったので、いつもどおりやるべきことをやろうということくらいだった」(佐々木大樹選手)
今シーズンのヴィッセルのスタイルは、前線からの強度の高いプレスが基本。それが少しでも緩むと、チームのバランスが崩れることが浮き彫りになったが、裏を返せば、立ち返るところがあるというのは、今年の吉田ヴィッセルの強みでもある。
では、なぜそれが1試合通してできなかったのか。大迫選手は「暑さ」を要因にあげた。「暑さや湿度もあり、『90分で戦おう』というのが、ちょっと、前半はチームとして見えたのかなと感じる。そのなかで後半に押し込めたのはあるが、そこはうまく(全体の)バランスをとりながら、やっぱり僕らは前からしっかりといくのが強みだと思うし、そこはチーム全体として共有して、練習でおとしこんで、試合でまたそれを出していければいいと思う」と、得点ランキングトップに立つクリムゾンレッドの10番も、前に圧力をかける従来の戦い方の重要性を語っていた。
猛暑続きの夏場を乗り切る戦いを目指しつつ、いかにベースとなるハイプレスを継続するか。また、今回の川崎F戦を含めて、負傷者が主力に出ている現状を踏まえて、戦力補強はあるのか。悲願のJ1リーグ制覇に向けて、ヴィッセルは首位で、勝負の8月を迎える。