女子サッカーの世界一を決める「FIFA女子ワールドカップオーストラリア&ニュージーランド2023」でベスト8に駒を進めた日本女子代表「なでしこジャパン」。2011年ドイツ大会以来の優勝を目指して躍動するチームを、なでしこジャパンOGの川上直子氏がラジオ放送を通じて称えるとともに、準々決勝のスウェーデン女子代表戦の見どころを語りました。
5日のラウンド16・ノルウェー女子代表戦では3-1と勝利した、なでしこジャパン。川上氏はラジオ番組『カンピオーネ!レオネッサ!!』(ラジオ関西)8月7日放送回のなかで、「1-1に追い付かれたとき、ちょっとやばいかなと思ったが、冷静になって振り返るとそんなに危ないシーンは少なくて、なでしこがずっと主導権を握っているような試合だった」と試合を回顧。15分のオウンゴールによる先制点、50分(後半5分)のDF清水梨沙選手の貴重な勝ち越し点は「いい時間に取れた」と、前後半の早い時間に得点を取れたことがチームに勢いをもたらしたといいます。
そのなかで、川上氏が現役時の本職としていた右サイドで、現在なでしこの主軸として好パフォーマンスを見せ続ける清水選手について言及。「前半も右サイドに出たボールを、クロスではなく、ちょっとアウトにかけて狙ったシーンがあった。(得点時には)何かが起こるんじゃないかとゴール前まで走っていたが、チャンスメイクやクロスだけでなく、自分でゴールを狙いにいっている姿勢は素晴らしい。トラップもちょうどいいところに止めていたし、個人の能力の高さを見せてくれた」と、賛辞を惜しみませんでした。
また、終盤の81分に値千金の3点目を決めたMF宮澤ひなた選手については、「やっぱり速かった。今大会はすごい活躍。予選リーグ(グループステージ)のときにスピードを披露しちゃっているから、対戦相手は絶対にそこを止めてくるんだろうと思っていたが、案外、走ってみれば抜けちゃう」と、今大会得点ランキングトップに立つスピードスターの絶好調ぶりに驚愕。「ちょうど相手のディフェンスラインを突破するとき一番速いスピードで、オフサイドにかからず相手の背後からスッと抜け出し、最後しっかりゴールまで決める。『世界のミヤザワ』にもうなってるかな」と、2011年大会に澤穂希氏が記録したW杯での日本歴代最多得点(5ゴール)に並んだ背番号7をべた褒めしていました。
守備面ではGK山下杏也加選手の好守についても触れました。「90分にビッグセーブがあったが、あれを入れられていたら3-2になっていたし、5分のアディショナルタイムのときはノルウェーに勢いがあった。失点していたら追い付かれて延長、PKになっていたかも。あのビッグセーブは試合(の勝敗)を分けるものだった」と、W杯2大会連続でなでしこのゴールマウスを守るWEリーグ初代MVPの活躍もチームにとって大きかったと述べました。
なでしこジャパンは次の準々決勝で、2連覇中だったアメリカ女子代表をPK戦の末に下したスウェーデン女子代表と対戦しますが、川上氏はGKの出来が勝負をわけるのではないかといいます。
スウェーデンのGKゼチラ・ムショビッチ選手は、アメリカ戦で枠内12本を含む計21本のシュートを浴びながら好セーブを連発して零封するなど、堅守が光るだけに、川上氏は「日本はゴール前で、もう1つなにか揺さぶってからの得点じゃないと、簡単には入れられないのかなと思う」とコメント。「ノルウェー戦でも6本のコーナーキックがあり、ショートコーナーなどをやってみたりしているから、そろそろ面白い形からの得点も見てみたい」と、セットプレーでのここ一番でのサインプレーなど、なでしこの“奇策”にも注目していました。また、川上氏は、「8月11日は『山の日』なので、山下選手が活躍してくれるんじゃないかな!」と、ヤマの愛称で親しまれる背番号1にエールを送っていました。
さらに、川上氏は攻撃面について「スウェーデンのDFもアメリカのFWにスピードで(おいて)いかれていたところもあったので、今回も宮澤選手のスピードは自信を持っていけるでしょう。相手が長谷川(唯)選手ら(パサー)のところをつぶしにきたとき、うまく周りを使いながらいけるか。日本のベンチには調子がよさそうな選手はいっぱいいるし、どこかがつぶしにかかられたら、違う選手を入れたりするのもいいと思う」と、なでしこの「スピード」と池田太監督の選手起用も、勝利へのポイントにあげていました。
なでしこの秘密兵器といえば、今大会フィールドプレーヤーで唯一出番のないFW浜野まいか選手。ノルウェー戦では出場機会に恵まれなかったものの、臨戦態勢は整っているようです。2022年のU-20女子W杯MVPであり、現在はスウェーデンのハンマルビーIFでプレーするなでしこの若き至宝は、スピードと得点力に長けたストライカー。彼女の出番からも目が離せません。そのほかにも、2022-23シーズンのWEリーグで大活躍したMF清家貴子選手やDF守屋都弥選手といったスピードを武器とする切り札の登場があるのかも楽しみなところです。