背びれやくちばしを持たない小型のイルカで、愛嬌のある顔立ちや仕草から水族館の人気者となっているスナメリ。絶滅危惧種にも指定されているこのスナメリが、実は大阪湾に生息していることをご存じだろうか。
ただ、海の環境悪化などが影響し、年々数は減少している。研究を行う神戸大学大学院海事科学研究科助教・岩田高志さんに話を聞いた。
スナメリは体長約1.5メートル、体重60~80キログラムと最も小さなクジラ類の一種。比較的水深の浅い沿岸域を好むため、人間の活動に影響を受けやすい動物だ。大阪湾を含む瀬戸内海東部は1970年代の高度経済成長期に開発が進み、スナメリの生息数が大きく減少した可能性があるという。特に大阪湾は、漁船や船の往来、海岸の埋立事業などが活発な場所。水質汚染や水中の騒音、船舶との衝突など、スナメリの生息域は今なお過酷な環境となっている。にもかかわらず、保全に向けた活動が思うように進んでいないのは、その生態が未だ謎に包まれていることが原因の一つだという。
「イルカのような背びれがなく、また水面で跳ねることがほとんどないスナメリは、観察するのが非常に難しいのです」と岩田さん。科学的知見や情報も不足し、例えば何を食べているのか、生態系の中でどのような役割を担っているのかも分かっていない。
「スナメリを守るためには、まず生態を知らなければなりません。その上で、人との競合を避ける手段を考えなければならないと思っています」(岩田さん)
大阪湾にスナメリが生息していることを周知し、保全活動のための生態調査への支援を呼びかけようと、岩田さんを中心に神戸大学と京都大学、神戸で来年オープン予定の神戸須磨シーワールド、大阪にある水族館「海遊館」のスナメリ調査チームらがプロジェクトを発足。
集まった資金は大阪湾内外のスナメリの行動・分布調査や食性調査に当てたいという。地域の人々にも保全活動に関心を持ってもらえたらと、リターンには調査に同行する「スナメリ調査隊員コース」やオリジナルステッカー・ポーチを用意している。