政府は2023年3月に空き家の優遇措置の一部見直しを盛り込んだ「特別措置法改正案」を閣議決定した。これにより、今までは固定資産税を安く抑えていた空き家でも、特定空き家に指定されると住宅用地の特例措置が適用されず固定資産税がこれまでの6倍になる恐れがでてきている。
特定空き家に該当するのはどういった物件なのか、賃貸・売買・仲介・管理・リフォームを手掛ける住宅関連の会社、one&one株式会社(神戸市須磨区)の代表取締役・金光照美さんに話を聞いた。
特定空き家の対象になるのは、「倒壊や著しく保安上危険となるおそれのある状態」「著しく衛生上有害となるおそれのある状態」「適切な管理が行われていないことにより著しく景観を損なっている状態」「周辺の生活環境の保全を図るために放置することが不適切である状態」といった物件だ。
市区町村が条件に該当した空き家を特定空き家として指定したあとに、所有者に対して必要な指導を行う。管理、修繕を行うよう義務づけられ、それを怠ると50万円以下の過料を科される。そして空き家の改善が見られない場合、固定資産税の軽減措置を撤廃する。
「指定された翌年から対象の固定資産税が6倍になるだけでなく、その物件が市街化区域内の場合は、固定資産税だけでなく都市計画税も3倍になります」と金光さん。空き家を解体して更地にした場合も軽減措置の対象からは外れるため、土地に課される固定資産税が上がるという。また、所有者の行方が分からないなどの理由で管理が難しいと判断された場合は、「行政代執行」により解体が行われるケースも。
全国で約800万戸あるとされる空き家の中で特定空き家は5年間で約1万2000戸と一部だったが、2023年の改正以降「管理不全空き家」も優遇措置の対象外になることが決定し、対象が大幅に増えることが予想される。
管理不全空き家とは、このまま放置すれば、いずれ特定空き家になるおそれのある空き家のことをいう。いまは特定空き家とまでは言えない場合でも建物の一部が破損・変形している、窓ガラスが割れている、雑草が生い茂っているような状態の空き家は、そのまま放置し続けるといずれ特定空き家になってしまう可能性がある。周囲への迷惑や危険が具体的に確認できる空き家が対象で、各地方自治体により判断基準が規定されている。
特定空き家より前の段階である管理不全空き家の状態でも、固定資産税が6倍になる可能性があるため、改正前より条件が厳しくなったということがうかがえる。「建物を解体し更地にしても、優遇措置無しの固定資産税が課税されるため、空き家を売却して手放すのか再活用していくのかなど、早急に検討が必要です」と金光さん。