心身ともに不安定になりやすいと言われる産後。「産後ケア」とは、出産で受けた身体のダメージを回復させ、精神的なサポートをするものです。母子ともに健やかに過ごすためにはどのような産後ケアが必要なのかを『産前産後ケアホテル ぶどうの木』広報の齋藤樹奈さんに聞きました。
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【骨盤ケア】
◆「骨盤ケア」はなぜ重要?
妊娠中は、胎盤から出る「リラキシン」というホルモンが分泌されます。リラキシンの作用により、靭帯や筋肉がゆるみ、胎児を狭い骨盤 (骨産道) から無事に出産させることができます
母胎の血中に残ったリラキシンは産後2ヶ月程度作用するため、無理な姿勢や下半身への重力負荷は、骨盤をさらに歪めることに繋がります。そのため、産後の回復をスムーズに行うためにも骨盤ケアは重要です。
◆「骨盤ケア」を行わないとどうなるの?
骨盤の正面にある恥骨(ちこつ)は左右対になっていて、左右の恥骨をつなぐ部分を恥骨結合と呼びます。この恥骨結合部の広がりは骨盤のゆるみの目安にもなり、指2本分以上広がってしまうと歩行が難しくなることも。助産師などにアドバイスをもらい、正しい骨盤ケアを行いましょう。
【おっぱいケア】
◆「おっぱいケア」ってなに?
おっぱいケアとは、母乳育児を成功させるためのツールのひとつ。出産し、胎盤が剥がれると乳汁分泌ホルモンが作用し、だれでも母乳が出てきます。しかし、分娩時の出血による貧血や疲労、心因性ストレスなどの影響、乳房の形や乳首の形状により分泌量に差も出てきます。母乳育児を目指すのであれば、乳腺刺激ホルモン(プロラクチン)の閾値が安定してくる3か月頃までしっかり吸わせて、反応のいいおっぱいにしておく必要があります。その手助けをするのがおっぱいケアです。
◆授乳の基本は「姿勢」
初めての出産・育児の場合、上手くいかないことが多い授乳。まずは、授乳姿勢をチェックしてみましょう。育児中は猫背や巻き肩(左右の肩が前方内側に入り込んでいる状態)になりやすい時期。肋骨に肩甲骨が張り付いてしまうと、母乳となる血液の流れを阻害することになり、母乳分泌の質と量を低下させます。『産前産後ケアホテル ぶどうの木』の助産師によると、理想的な授乳姿勢のポイントは3つあるといいます。
(1)坐骨でしっかり座る。坐骨とは、骨盤の一番下の骨。椅子に座った際、お尻の骨がゴツゴツ当たる部分が坐骨です。坐骨がしっかりと椅子に当たるように座りましょう。
(2)背筋を伸ばし、 胸を開いて肩の力を抜く。
(3)自分の乳頭の高さに赤ちゃんを抱きあげる。授乳クッションに赤ちゃんを寝かすのではなく、 抱きあげた赤ちゃんとおっぱいの隙間を埋めるイメージで行います。決して覆い被さってはいけません。
◆家でもできる「おっぱいケア」
首回りのストレッチや、肩甲骨の可動域を広げるストレッチ、乳房の基底部(おっぱいの底の筋肉)をユラユラ揺らす体操などは、家庭でも簡単に行うことができます。まずは、専門家である助産師に、自分に合ったケア方法を相談することが大切だそうです。