2023年9月。21日には月による「アンタレス食」が起こる。明石市立天文科学館でダジャレまじりの星空解説でみんなの心を惑わす人気者「ブラック星博士」は、「全国で見られるんじゃ。アンタレス、さそり座の心臓の星が月に隠されるんじゃな。これは望遠鏡で見るとなかなか面白いかもしれんぞ」と話す。
月は地球の周りを公転しており、地上から見ると空を東へ東へと移動している。この時、月が背景にある天体を隠していく現象を「星食」「掩蔽(えんぺい)」といい、21日にはアンタレスが上弦前の月に隠される。アンタレスは、さそり座のS字カーブの中ほどにある赤い1等星。アンタレスのような明るい恒星は肉眼でも観察しやすく、今回は国内で14年ぶり、夜に起こるものでは18年ぶりのアンタレス食となる。今後数年間は、世界のどこかで毎月のように起こるが、日本の広範囲で見やすいのは今回のみとなる。
場所によって食が起こる時間は変わるが、神戸では17時16分ごろに、アンタレスは月の光っていない方の縁(暗縁)から月に隠される(潜入)。この日の日の入りは17時59分なのでまだ空は明るく潜入の様子を観察するのは難しそう。アンタレスが月の背後から姿を現す「出現」は18時44分ごろ。月の光っている方(明縁)から出てくる。惑星とは違い、恒星は点にしか見えないので、「一瞬」の出来事になる。肉眼でも見えそうだが、双眼鏡や望遠鏡で、月の光っている方の縁に焦点を合わせたい。
アンタレスを隠した月は、その後徐々にふっくらしていき、29日には満月に。この日は「中秋の名月」となる。中秋の名月は太陰太陽暦の8月15日の夜に見える月のこと。中秋の名月と満月の日がずれることもある。去年(2022年)は同日だったが、来年(2024年)は中秋の名月が9月17日、満月は9月18日となる。
明石市立天文科学館では、アンタレス食、中秋の名月のインターネット中継を予定している。望遠鏡や双眼鏡がなくても楽しめそう。
また日本では太陰太陽暦の9月13日の夜を「十三夜」といい、この日にもお月見をする習慣がある。「後(のち)の月」「豆名月」「栗名月」とも呼ばれ、今年は10月27日となる。もし、雲に隠れるなどして「中秋の名月」をみることができなかった場合、少し欠けた「後の月」を楽しむのもいい。
8月に「衝」となり観察の好機となっている土星は、27日に月と並ぶ。0.5~0.6の明るさで、街中でも肉眼でも簡単にみつけられる。満月に近い月との共演が楽しみだ。土星と言うと「環」、残念ながら肉眼では見えない。環を見るには天体望遠鏡が必要だが、双眼鏡でも「なんとなく楕円っぽく見える」という。明けの明星の金星は、19日にマイナス4.8等と最大光度となる。日の出後の青空でもその姿を捉えられそう。
記事協力:明石市立天文科学館・井上毅館長