兵庫県北部の但馬地域を舞台に多彩な演目が楽しめる『豊岡演劇祭2023』が9月14日(木)〜24日(日)の期間で開催中。
同演劇祭のフェスティバルディレクターも務める劇作家・演出家 平田オリザさんのラジオ番組(ラジオ関西『平田オリザの舞台は但馬』)に、演劇祭の関係者が出演。10日間の締めくくりともいえる演目のひとつ、『但東さいさい』について語った。
但東町は豊岡市の東端に位置し、京都に隣接していることから、かつては“西陣”を支えたといわれる絹織物の産地。広がる田畑のなかには、小さな集落や数多くの神社が点在している。神社の境内には、旅芸人の一座や農民が芝居を上演するための“農村舞台”が盛んに作られており、いまも20か所の舞台が残されている。
『豊岡演劇祭2023』のフェスティバルプロデュース作品『但東さいさい』は、2020年に始動したプロジェクトだ。京都の劇団「烏丸ストロークロック」が、但東町にある3つの集落(合橋・資母・高橋)に伝わる民話をもとにしたオリジナルの『こども神楽』を制作。昨年、地元の子どもたちとともに久畑一宮神社の農村歌舞伎舞台で上演したところ好評を博した。今年は、23・24日に上演予定。
但東町高橋地区の地域マネージャーを務める衣川晶子さんによると、農村歌舞伎舞台は、昭和中頃までは村の青年団や旅一座が利用していたものの時代を経るごとに稼働率は低下。2002(平成14)年以降に使用された記録はなく、祭りの餅まき台として利用される程度だったという。
民話についても但東町教育委員会がまとめた冊子は存在していたが、活用されておらず、これらをつなげてくれたのが、地域取材やフィールドワークをもとに数年かけて長編を作るスタイルが人気の劇団「烏丸ストロークロック」だった。
「急によそ者が来て、根掘り葉掘り(話を)聞いてきてご迷惑ではなかったですか?」という質問を投げかけた、平田さん。これに対し、衣川さんはこのように答えた。
「最初は『何が始まるの?』と思いました(笑)。(劇団に)『話を聞く場を設けてほしい』と頼まれたものの、村の長老にどのように説明すればよいかもわからなくて。ですが、実際に舞台が使われているところを見ると、地元の私たちも『ああ、いいねえ』と(思った)。子どもたちも民話自体は知っているけど、舞台にするとまた違って。いいふるさと教育になった気がします」(衣川さん)
今年の『但東さいさい』は、さらにブラッシュアップ。幕間に解説や芸能の紹介が行われるほか、24日には赤野神社の“太刀振り”や大生部神社の“練太鼓”をはじめとした地域芸能の披露、屋台の出店が予定されている。まさに、“地域のお祭り”が感じられる演目となっている。