「誰もが気軽に演奏を楽しめるような楽器を作りたい」。そんな思いを形にした全く新しい電子楽器「ParoTone(パロトーン)」を大阪市の企業が開発し、注目を集めている。
「eMotto株式会社」代表取締役の三田真志郎さんに話を聞いた。
「ParoTone」は片手で持てるほどコンパクトなキーボードだ。左右に5列×3行のキーが並び、右手でメロディーラインを、左手で和音(コード)を奏でられるようになっている。キーボードをスマートフォンやタブレットに繋ぎ、アプリを起動。好きな曲を選び、画面に表示される音や和音コードのタイミングに合わせてキーを押すだけで演奏ができる。まるで音楽ゲームのような感覚で直感的に弾けるため、楽器経験がない人でも楽しめるのが特徴だ。三田さんは「過去に楽器に取り組んで挫折した経験がある人でも、無理なく続けられるという声が届いています」と話す。
開発は三田さんが大阪大学大学院在学中の2019年4月、学生チームによる研究プロジェクトとしてスタートした。楽器を演奏する際、初心者にとっては楽譜の読み方や指使いが高いハードルとなる。そこで、譜面を読んだり指を動かしたりするための脳の認知負荷を軽減させるインターフェースを研究し、アプリとキーボードを製作。約3年間に渡って試作を繰り返し、2022年4月にスマートフォンアプリのリリースにこぎ着けた。さらに「ParoTone」がピアノよりも5倍習得が速いことを実証した国際学術論文も発表。昨年実施した最初のクラウドファンディングでは数多くの支援を受け、500台の「ParoTone」をリターンとして届けたという。現在は2回目のクラウドファンディングで先行予約販売を行っている。
開発する中で最も苦労したのは、これまでにない新しい楽器としての「敷居の低さ」と「奥の深さ」を両立させることだったという。
初心者にはゲーム性が強く親しみやすさが求められる一方で、上達すれば自由に演奏できる楽器ならではの要素も欠かせない。どちらの側面も満たすために、音のバリエーションやキーボードの配列・色使い、譜面の見せ方にも徹底的にこだわった。