明治~昭和にかけての近代画壇をけん引した日本画家、横山大観(1868~1958年)と日本画の伝統を洋画と融合させた洋画家、梅原龍三郎(1888~1986年)。2人の画家の優品を紹介する展覧会「コレクションでつづる 横山大観 梅原龍三郎展」が山王美術館(大阪市中央区)で開かれている。2024年1月29日(月)まで。
同館が所蔵するコレクションの中から、大観の代名詞といえる、富士山を題材とした作品など20点、同館収蔵後、初展示となる2点を含む梅原の23点の計43点を公開。ジャンルが異なる2人の独自の画境を堪能できる。
大観は70年もの画業の中で、日本画の伝統的な線描ではなく、色彩の濃淡で空気や光を表現する無線彩色描法を編み出した。しかしその表現は世間から評価されず、揶揄を込めて「朦朧体(もうろうたい)」と呼ばれた。同展では、朦朧体による初期作「不二霊峰」(1905年)などを紹介。
大観はその後、細かい筆致で絵具を塗り込めていく手法を確立、微妙な色彩や空間の奥行きを描くように。さらに1910年代には琳派などの装飾的表現を加えることで新たな空間表現を獲得、水墨画においても墨の濃淡で空気感を表す格調高い技法を生み出した。
梅原作品の見どころは初展示の2点。そのうち「ブロンズと牡丹」(制作年不詳)は、色鮮やかな赤色を中心とする花々がブルーの花瓶に生けられ、梅原の持ち味である力強さ、おおらかさが際立つ作品だ。
一方、「修善寺」(1927年)は、薄く溶いた絵具を柔らかな筆遣いで塗り重ねた風景画。師弟関係であったルノワールが他界、遺族弔問のために渡欧した後の作品で、修善寺の町並みとともに、裸で湯あみを楽しむ様子や窓から外を眺めている人物など、どこか懐かしい、当時の風俗も描かれている。梅原は弔問のための渡欧以降、浮世絵ややまと絵、琳派などの日本の伝統絵画から取り入れた骨太の線、豊かな色彩を持った独自の画風を築き上げていった。
展示を担当した本田亜紀子学芸員は「日本画という言葉がなく、西洋の影響を受け始めた時代に、日本画の新たな潮流を推し進めた大観と、日本の伝統的な絵画技法を取り入れつつ、装飾的な日本独自の油絵を生み出した梅原。新しいことに挑戦した2人の巨匠の作品を見比べてもらえたら」と話している。
◆「コレクションでつづる 横山大観 梅原龍三郎展」
会場 山王美術館(〒540-0001 大阪市中央区城見2丁目2-27)
会期 2023年9月1日(金)~2024年1月29日(月)
開館時間 10:00~17:00(入館は16:30まで)
休館日 火・水曜、年末年始(2023年12月29日~2024年1月3日)
入館料 一般1300円、高大生800円、中学生以下500円(保護者同伴に限り2人まで無料)
問い合わせ 電話06-6942-1117(山王美術館)
【山王美術館 公式HP】