国内外で幅広く事業を展開する物流機器・システムメーカーが、今年の夏、新たな一手として打ち出したのは「カプセルトイ」だった。業界を代表するBtoB企業は、いかにして手頃な“おもちゃ”を戦略に組み込んでいったのだろうか。本業とかけ離れたプロジェクトに対する社内の反応、今後への展望についても取材した。
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オークラ輸送機株式会社(本社:兵庫県加古川市)がコンベヤをモチーフに展開した5種類のカプセルトイ。
この企画を発案した営業企画室EC推進グループ グループ長の金川健太朗さんは、部品を収めたカプセルに、とある仕掛けを施した。同社のECサイトに飛ぶQRコードを載せたリーフレットを封入したのだ。
さらには、「ガチャに触れたことをきっかけに、学生が『この企業見たな』と認識することも、秘めた可能性として込めました」と、リクルーティング要素をまとわせたことも明かした。
コンベヤメーカーとしては斬新な今回のアプローチ。社内の反応について、金川さんはこのように語った。
「通常の会議は重い空気が流れることも多いのですが、この企画については盛り上がりました。もともと社長、副社長も(カプセルトイが)好きで、皆から盛んに繰り出される意見をまとめるのが難しかったほどです。マテハン(マテリアルハンドリング=運搬作業)のシミュレーションは通常机上(PC上)で行うのですが、『リアルなモノでできれば面白い』『もう少し大きいものはできないか』などの意見も出ています」。
まさに順風満帆と言える船出。しかし、敢えて控えめに打って出たという。「第二弾、第三弾につなげていくために一気には出さず、まずはしぼりこみました」(金川さん)。
製品の反省点や課題も見えたとのこと。「今回は工程を一定程度メーカーに任せました。次は一から作って、さらに自由度を高めたい。モーターのついていないものでできればいいかな。実際の素材を使えば、重みがあって『ええな(いいな)』となりそうです」とした上で、「今回見送った中国への現地(製造現場)視察も、次回以降は視野に入れたい」と意気込みを隠さなかった。
もう一段階も視野に入っている。「加古川(市内)で作れたらさらに地域貢献につながると聞きました。市内に作れるところがあったら、もっと面白い取り組みになりそう」と、ふるさと納税返礼品への追加も見据えているそう。
この日は、同社の本社、東加古川工場、東京支店、大阪支店に、マシンと5色のカプセルが運び込まれた。
「次はローラー(コンベヤ)、いこ」「海洋プラで作って……」「ロボットなんかあったらうれしいなぁ」「カーブ、作れたらいいですね」。手のひらサイズの“誇り”を前に、弾ける笑顔の元少年たちのそばで「やってよかった」と、安堵にも似た表情を見せた金川さん。仲間との尽きない話こそが、次へとつながる架け橋と言えそうだ。(終)