59年ぶりに関西勢同士の対戦となった今年のプロ野球日本シリーズ。セ・リーグ優勝の阪神がパ・リーグ優勝のオリックスを4勝3敗で破り、38年ぶり2度目の日本一に輝いた。最後まで白熱した「なんば線シリーズ」について、両チームのOBでもある野球解説者の野田浩司さんに振り返ってもらった。
まず今年の日本シリーズについて野田さんは、「いいシリーズでしたね。先発がともにしっかりしていて、思ったよりも点は入ったけれど、(どちらが勝ってもおかしくない)紙一重のシリーズでした」と話した。
野田さん自身は日本シリーズで2度(1995年は対ヤクルト、1996年は対巨人)、登板している。
「独特の雰囲気があります。(リーグ)優勝できないと(シリーズには)出られないけれど、僕の中では、(シーズンの)ご褒美のような感じだった部分もありました。とはいえ、特別な緊張感があるので、『緊張するな』と言っても緊張しますから。でも今回、両チームを見てもそんなにガチガチ(に緊張していたわけ)でもなかったですね」
4勝3敗。結果からみればどちらに転んでもおかしくなかった今シリーズ。野田さんは阪神が逆転勝ちした第5戦をポイントとして挙げた。
「(阪神は)勝負強かったですね。オリックスは6戦目を(山本)由伸で取り返しましたけど(※山本由伸投手が完投し、シリーズ初勝利を決めた試合)、(阪神にとっては第5戦の)あの1勝がいきましたね。あのままオリックスが取っていたら、(6戦目を)由伸で勝って4勝2敗で逃げ切ったことも十分考えられます」
そして、阪神を後押しした理由をもうひとつ、次のように述べる。
「(今回は)特に4戦目と5戦目が激闘でしたね。京セラドーム大阪では(やや一方的な)偏った試合にはなったけど、そこは『球場の不思議さ』が出たと思います。やっぱり甲子園は独特(の雰囲気がある)。僕も甲子園でやっていたから感じます。(打者を)追い込むと歓声で『あと1球』コールとか、『あとアウト1つ』コールとか。ピンチを乗り切ったときの盛り上がりとかは半端じゃないですからね。(オリックスは)交流戦があるので、甲子園は初めてではないけれど、(試合の)数は少ない。シリーズ独特の(緊張感の)なかで、雰囲気にのまれたわけではないけれど、オリックスの選手にしたら、多少のアウェイ感はあったと思いますね」
そして野田さんは来季についても語った。まずオリックスから。
レギュラーシーズン3年連続で勝利数や防御率など投手4冠を達成し、3年連続3度目の沢村賞に輝いた日本のエース・山本由伸投手が、来シーズンは海を渡ることが濃厚。日本シリーズ終了直後、オリックスはポスティングシステムによる米・大リーグへの移籍について承認したことを発表しているが、背番号18の穴を、野田さんはそこまで悲観していない。
「去年も『吉田正尚(現:ボストンレッドソックス)がいなくなってどうなるんや』と言われていたが、(西武から)森友哉を獲得できたし、頓宮裕真が出てきて首位打者を獲るような打者になった。また、前半戦では茶野篤政が出てきた。(仮に)主力投手が抜けたとしても『育てながら勝つ』という形になってくるでしょうね。椋木蓮、曽谷龍平、齋藤響介……(若手選手で)面白いのがいるし、山下舜平大も。もちろん由伸はとてもすごいピッチャーだけど、『新しい芽を育てながら勝つ』という展開にもっていけるんじゃないですかね」
一方、日本一になった阪神については「(岡田)監督も『もっと強なるよ』と話していますが、(日本一の)経験もできたし、誰か(主力選手が)抜けるというのもないだろうから、もっと強くなると思う。打者もいい選手が多い。(今シリーズ7打点で新人最多記録を塗り替える活躍の)森下翔太や、佐藤輝明も魅力があるし、もっとすごい打者になる。(今シリーズMVPの)近本光司や、中野拓夢、木浪聖也も素晴らしいバッティングをしている。守りもいいですし、隙がないです」と、古巣のタテジマについても、連覇への期待をかけていた。
そして野田さんは次の言葉で締めくくった。
「細かいところができている両チーム。シーズンオフの動向などで、多少は戦力が変わってくることはあるかもしれないですが、(今季)ぶっちぎりで勝ち上がった両チームなので、来年も面白い戦いになると思いますね」