北朝鮮による拉致被害者を取り上げたパネル展が10日、神戸市中央区の兵庫県警本部などで始まった。1983(昭和58)年、留学先のイギリス・ロンドンで消息不明となった神戸市長田区出身の拉致被害者、有本恵子さん(失踪当時23歳)の父・明弘さん(95)が11日、会場を訪れ、日本への早期帰国に向けて拉致問題解決を訴えた。パネル展は15日まで。
拉致問題を風化させず、拉致被害者らの情報提供を広く呼び掛けるため、「北朝鮮人権侵害問題啓発週間」(毎年12月10日~16日)に合わせて開催。恵子さんと神戸市出身の拉致被害者の田中実さん(失踪当時28歳)、また兵庫県内で拉致の可能性が排除できない特定失踪者(男女27人)の顔写真やプロフィールを紹介している。
恵子さんはロンドンでの留学を終えてヨーロッパを旅行中の1983(昭和58)年に消息を絶った。
あれから40年が経つ。日本人拉致被害者に関しては、5人が帰国した2002年10月以降、新たな帰国者がおらず進展がない。
「国は拉致問題をずっとほったらかしにしている」明弘さんはいら立ちを隠せない。
「英語の勉強なら、日本でもできる」。明弘さんは、海外で暮らしたいという願望があった恵子さんのイギリス留学に反対していた。恵子さんに会うことができたら、反対を押し切って日本を出たことを「けしからん」と叱りたいと話す。
しかし、「多くの被害者が日本で拉致されているが、海外で拉致された恵子はどれだけ不安な気持ちだっただろうか。その後、逃げるに逃げられない状況に置かれたのだから」と案じる。
会場の兵庫県警本部別館7階 神戸優良・高齢運転者免許更新センターでは、期間中、パネルに加え、明弘さんが恵子さんへの思いを語るビデオメッセージも上映する(パネル展示は午前9時~午後4時)。
このほか明石運転免許更新センター2階(明石市荷山町)や兵庫県庁2号館1階(神戸市中央区下山手通5丁目)などでも開催。


