女子サッカー・WEリーグのINAC神戸レオネッサは、この1週間でリーグ戦、カップ戦を1試合ずつ消化。13日のWEリーグ戦では引き分けて単独首位に浮上することはできませんでしたが、17日の皇后杯5回戦ではなでしこリーグ1部クラブとの接戦を制してベスト8へ進みました。この2試合について、元なでしこジャパンDF川上直子氏が、ラジオ番組で感想を述べました。
13日にノエビアスタジアム神戸で行われたWEリーグ第3節で、今シーズン序盤戦で好調な大宮アルディージャVENTUSと対戦したINAC神戸。平日夕方、午後4時キックオフのホームゲームということもあり、観衆は806人と4桁には届かなかったですが、子どもサポーターも多く駆け付け、ヴィッセル神戸をJ1優勝に導いた吉田孝行監督も激励に訪れた一戦では、ホームチームも意地を見せます。
元INAC神戸のMF阪口萌乃選手に先制点を許したなか、反撃を仕掛けると、84分、FW高瀬愛実選手(※「高」=はしごだか)のシュートがクロスバーに当たって跳ね返ったところを、途中出場のFW桑原藍選手が泥臭く押し込み、終盤に1-1の同点に。結局そのまま引き分けて、同日での単独首位浮上はならず、2試合連続引き分けとなったINAC神戸ですが、首位の日テレ・東京ヴェルディベレーザと勝点11で並びました。
川上氏は、「大宮がこれまで(過去2シーズン)より集中して戦っている。ディフェンスも粘り強い」と、アウェイチームの踏ん張りを評価。古巣を相手に先制点を決めた阪口選手については、「身長もそんなにないのに、クロスに対して、DFと競りながら当てた。落下地点に入るうまさがある。最後に押し込んだところも(DFの間から)エイッと足を出したと思うが、それが当たっちゃう(のがすごい)」と、移籍後すでに3得点目、チームを牽引する活躍を見せる11番を称えていました。
また、ホームチームについては、前半終了間際のプレー、MF北川ひかる選手のチャンスメイクから訪れたFW田中美南選手の決定機のシーンにスポットライトを当てて解説。「日本代表で一緒にやっている大宮DF乗松瑠華選手を腕でおさえながら、DF長嶋洸選手をかわして、ゴールへ巻いて入るようなシュートを放った。あれが入っていればむちゃくちゃかっこよかったが……」と、惜しくも得点にはならなかったが、なでしこのストライカーが見せたシュートに至るまでの一連の流れを絶賛していました。
そして、今年2月に加入し、2シーズン目を迎えているFW桑原選手のプロ初得点を祝福するとともに、「INACにとって貴重な勝点1。勝点3を失わなかったのは大きい」と述べていました。
ただし、これまで2シーズンのリーグ戦で、初年度のINAC神戸が16勝2分け2敗、2年目の三菱重工浦和レッズレディースが17勝1分け2敗と、優勝したチームが引き分け・負けを2以下にとどめています。そうなると、すでに2分けのINAC神戸としては、これ以上、引き分けや負けは重ねたくないところ。川上氏は、「簡単に勝てない試合も出てくると思うが、かろうじて引き分けたではなく、かろうじてでも勝つことを重ねないと、優勝(達成)はなかなか簡単ではないのかなと思う」と、タイトル奪還に向けて勝ち切る重要性を語っていました。
一方、17日に兵庫県立三木総合防災公園陸上競技場で行われた皇后杯5回戦で、INAC神戸は、なでしこリーグ1部のASハリマアルビオンと対戦し、2-1で勝利しました。「カテゴリーが違うチームとの対戦は簡単ではない」と川上氏も言うように、前半早々に高瀬選手の先制点でリードを奪いながら、後半に追い付かれ、拮抗した展開となったこの試合。それでも、後半から途中出場したMF成宮唯選手が81分に決勝ゴール。川上氏いわく、「右で蹴る、と見せかけて、左にキュッと持っていったシュート。本人のイメージ通りだと思う」という一撃で、兵庫県勢対決を制しました。また、12月をもって退団することが決まっているMF林愛花選手は、INAC神戸でのラストゲームで先発フル出場。勝利で有終の美を飾りました。
この試合で終盤にPKでの得点機もあったINAC神戸ですが、PKを獲得したFW愛川陽菜選手が自ら蹴るも、GKの好守にあい、追加点はならず。「ちょっとGKとテンポがあってしまった。助走が短いように思ったのと、表情が少し緊張していたかな」と愛川選手をおもんぱかる川上氏は、「外しても、外しても、FWであり、前目の選手なので、何回も蹴ったらいい。むしろ、蹴る勇気がすごいと思う」と、若きアタッカーを後押ししていました。
INAC神戸は来年1月14日に行われる準々決勝で、同じWEリーグのアルビレックス新潟レディースと、今回と同会場の三木陸で対戦が決定。新潟Lとはリーグカップ、リーグ戦ホームゲームに続き、3度目の顔合わせになります。
皇后杯5回戦から中5日で迎えるINAC神戸の次の試合、2023年のラストマッチは、WEリーグ第6節、ホーム・ノエビアスタジアム神戸でのセレッソ大阪ヤンマーレディースとの、リーグ戦初となる関西ダービー。セレッソには昨シーズンINAC神戸でプレーしたMF脇阪麗奈選手、DF小山史乃観選手、DF筒井梨香選手が在籍。プレシーズンマッチや練習試合でよく一戦を交えていることもあって、「お互い知っている同士なので、相当気合いも入る試合になると思う」と、同試合で解説を担当予定のなでしこのレジェンドは、白熱の好ゲームを期待していました。
なお、この一戦には、今年9月に現役引退を発表した元なでしこジャパンFW、INAC神戸でもプレーした岩渕真奈氏が来場することも発表されています。クラブによると、試合当日は岩渕氏がグッズ売場でのサイン会、試合前のセレモニー、U-12「第2回INAC CUP」に参加する予定とのこと。チケットなど試合の概要は、INAC神戸のホームページに掲載されています。
※ラジオ関西『カンピオーネ!レオネッサ!!』2023年12月18日放送回より