「まなざし」をデザインする ランドスケープアーティスト・ハナムラチカヒロ | ラジトピ ラジオ関西トピックス

「まなざし」をデザインする ランドスケープアーティスト・ハナムラチカヒロ

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 劇作家・演出家 平田オリザさんのラジオ番組(ラジオ関西『平田オリザの舞台は但馬』)に、大阪公立大学の准教授でランドスケープアーティストのハナムラチカヒロさんが出演。「まなざし」をキーワードに、2週にわたって自身の活動や社会の動きを振り返った。

ランドスケープアーティスト・ハナムラチカヒロさん(写真中央)、番組パーソナリティーの平田オリザ(同右)、田名部真理(同左)

 ランドスケープデザイナー、アーティスト、俳優、博士と、さまざまな肩書を持つハナムラさん。番組冒頭、平田さんは大阪大学コミュニケーションデザイン・センターでのハナムラさんとの出会いを振り返った。

「僕が関西に来るきっかけにもなったんですが、『新しい教育機関を立ち上げる!』と当時、(大阪大学の)副学長(のちに総長)だった鷲田清一さんが、それこそ“七人の侍”のごとく、いろんな……何をやっているか分からない人を集めてきて(笑)。そのなかで1番とがっていた若手がハナムラさんです」(平田さん)

 平田さんとの出会いは、ハナムラさんにとっても大きなターニングポイントだったという。これまで、造園・緑地公園・都市計画などに関わってきたが、同センターで哲学者や劇作家、医療人類学者らと日々ディスカッションを重ねていくうちに、「自身は自然や建築物などの『対象物』のデザインしか扱っていないのではないか」と疑問を抱くようになった。

「見ている人間の“視点”を変えることで風景を変えることができるのではないか」。そんな問いを起点に、学術と芸術を横断するさまざまなインスタレーションを発表。大阪赤十字病院入院病棟の中庭に霧を拡散させ、シャボン玉を飛ばすプロジェクト『霧はれて光きたる春』は、2012年の第一回日本空間デザイン大賞・日本経済新聞社賞を受賞した。

ハナムラチカヒロ『霧はれて光きたる春』(撮影:堀川高志)

 受賞作品について、ハナムラさんはこのように解説した。

「800人いる患者さんのほとんどが、コミュニケーションがないまま闘病されていました。大規模病院の中庭は、唯一全体をつないでいる空間だった。そこで霧とシャボン玉で劇的な空間を演出することで、患者さんの不安を一瞬でも取り除くことができるかもしれない。かつ、医者や看護師、見舞いに来る人みんなが立場に関係なくフラットな状態でシャボン玉を見上げる。そこにコミュニケーションが生まれる。意味の分からない風景が、医療者と患者の関係性を変える。人が見向きもしない場所にこそ可能性があるんです」(ハナムラさん)

 ハナムラさんの言葉を受け、平田さんもこのようにコメントを残した。

「見舞いに来た人が、売店の店員さんに『あれ、何だったんですかねえ?』と(尋ねるように)、空間から時間軸にも広がるのがいいですね。今では、小児病棟の建設にアーティストが関わらないほうが稀になりました。医師に対して質問がしやすいイスの配置になっているか、壁の色やそこに行くまでの道のりは緊張させるものになっていないかなど、『医療コミュニケーション』に配慮するのが当たり前になってきましたね」(平田さん)

ランドスケープアーティスト・ハナムラチカヒロさん(写真中央)、番組パーソナリティーの平田オリザ(同右)、田名部真理(同左)

※ラジオ関西『平田オリザの舞台は但馬』2023年12月21日放送回より

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『平田オリザの舞台は但馬』
放送日時:毎週木曜日 13:00~13:25
放送局:ラジオ関西(AM 558khz / FM 91.1mhz)
パーソナリティー:平田オリザ、田名部真理
メール:oriza@jocr.jp

『ラジコ』では放送後1週間はタイムフリーでの聴取が可能。番組では、平田オリザさんが、ともにパーソナリティーを務める田名部真理さんと、これまでの自身の話しや演劇界への思い、移住拠点となっている兵庫・豊岡、但馬地域について、トークを進めていく。

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