コロナによる移動制限も無くなり海外に行く機会が増えたという人も多いのではないでしょうか? そんな海外旅行で感じるのが文化の違い。日本では当たり前の事が、海外だと「そうではない」ことに直面することもしばしば。今回は“ドアの開く方向”に着目、日本と海外の違いを近畿大学建築学部・佐野こずえ先生に聞きました。
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まずは玄関について。日本の玄関ドア基本的に外開きになっています。一方、アメリカをはじめ海外では内開きタイプが多いそう。なぜ日本の玄関は外に向かって開く仕様なのでしょうか? 佐野先生は大きく分けて3つの理由があると言います。
【理由1/靴を置くスペースの確保】
「日本では、靴を脱いで家に上がる習慣があります。ドアを内開きにしてしまうと、玄関で脱いだ靴に扉がぶつかったり物を置きにくいですよね? そこで、ドアを外開きにすることでスペースを確保していると思われます。
海外(欧米)は家に入る時も靴を脱ぐ文化がないため、ドアが内開きでも問題ありません。また、内開きは『人を迎え入れる』という意味合いも含ませていると言われています」(佐野先生)
【理由2/防犯への考え方の違い】
「海外のドアの内開きには、もし不審者が家の中に入ってこようとした場合に、扉に体重を乗せて侵入を防止することができる……というセキュリティの側面もあります。
逆に、日本では古くから、セキュリティにおける“玄関の重要性”に重きを置いてなかったと考えられています。犯罪が多発している現代社会においても、地方の家では玄関を開けっ放しにしていたり、鍵をかけなかったりする家屋がいまだにあります。日本では『人の目によって防犯を行う』という村文化がベースにあるので、防犯のために内開きドアを採用することは少ないのでしょう」(佐野先生)
【理由3/雨風の吹き込み防止】
「日本は天候が様々で雨風が強い事が多い地域。そのため扉は外開きにしていることが考えられます。内開きよりも外開きの方が雨風の吹き込みを防ぐ事ができ、海外でも北欧などの寒い地域では吹雪の吹込み防止の目的で外開きタイプのドアを採用する住居が多いと聞きます。
佐野先生いわく、玄関だけでなく“扉の開き方”には様々な理由があるとのこと。
「たとえばお風呂やトイレなどの狭い空間を考えてみてください。何らかの理由により中で人が倒れてしまっている場合、内開きだと扉を開けることができません。そのためこういったスペースの扉は、基本的に外開きや折戸になっています。
一方で、ホテルやオフィスなどは、各所のドアを内開きにすることで避難経路を確保する狙いがあります。有事の際、外開きの扉ですと避難経路を遮断してしまう可能性があるためです」(佐野先生)
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扉を開ける方向は外か内か……普段なにげなくしている行動について調べてみると、一つ一つにはっきりとした理由がある事が分かりました。
※ラジオ関西『Clip』2024年1月9日放送回より
(取材・文=濱田象太朗)