仕事で毎日のように履く人もいるであろう「革靴」。地道にメンテナンスすれば末永く履けるアイテムだ。毎日手入れをするのは難しいが、なるべく長持ちさせるためには普段からどのような手入れをすればいいのだろうか。
フルオーダーで革靴を手作りしているメーカー『スピーゴラ』(神戸市長田区)の代表を務める鈴木幸次さんに教えてもらった。
「長持ちさせる基本中の基本として、『シューツリー』と呼ばれる木の型を入れ靴のシワや型崩れを防ぐこと。毎回クリームをつけて磨くことは難しいと思うので、できれば履いたあとにはブラッシングだけはしてホコリや汚れを取り除いて下さい。そして、皮が乾いてるなと思ったらクリームで保湿すると効果的です」(鈴木さん)
鈴木さんがこの道に進んだきっかけは、父親にあった。デザイナーが作成したデザイン画をもとに、パターン(型紙)をつくる「シューズパタンナー」の仕事をしていた父親のもとで学んだのち、さらなる勉強のためにイタリアに渡ったという。そこでメンズオーダーの手作り靴を見て興味がわき、進路を決めたのだそう。
そして帰国後の2001年、自身のブランド『スピーゴラ』を設立した。意味はイタリア語で「鱸(スズキ)」。自身の苗字をイタリア語読みし、遊び心が感じ取られる。鈴木さんは「イタリア人からはレストランだと勘違いされることもあります」と笑っていた。
アトリエ兼店舗に足を踏み入れると、革と木の香りが漂う。多くの靴メーカーが集積する靴の街・神戸市長田区だが、全て手作業でオーダー革靴を作っているのは唯一だという。今では日本人だけではなく海外の顧客からの引き合いもあり、香港やニューヨーク・シンガポールなどに赴いて靴のオーダー会を開き、成功を収めている。
「クラシックなデザインの中で、どれだけ自分の個性を出せるか」ということにこだわっているという鈴木さん。奇をてらいすぎてデザイン性が高すぎるものになるとビジネスユースできなくなるため、「用と美」のバランスを考えて制作に励む。最近では革の値段が年々高騰しているものの、品質を落とすことはできないため苦労することが多いという。