神戸では誰もが知ると言われるほど有名な老舗洋食店「欧風料理もん」(神戸市中央区)。90年近く、伝統的な洋食を中心にその味を受け継ぎ、地元から愛されてきた名店です。ビフカツのサンドイッチやグラタンなど昔ながらの料理がそろいますが、その中に、予約しないと食べられない特別メニューがあります。しかも、添えられた“意外な食材”が生む独時の味わいが人気だと聞き、取材しました。
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三代目店主の日笠尚子さんにによると、欧風料理もん(以下、もん)がオープンしたのは1936年。「これからは洋食の時代だ」と考えた初代店主が新開地で開業し、戦後になって現在の場所・三宮に移転したといいます。
店は4階建てです。約100席を備えたモダンな建物で内装は民芸調。アンティーク家具が並び、さながら博物館のような雰囲気です。家具や骨董品は初代店主が趣味で手に入れたコレクションの一部だそうで、海外の美術館に展示されたことのある貴重なものも飾られています。
そんな店の3、4階にある小部屋で提供されるのが、事前予約必須の人気メニュー「スキ焼」です。バランスの良い霜降りになった神戸牛を鍋で煮たのち、溶き卵を付けて食す……のは一般的ですが、もんではなんとそこに“大根おろし”が加わります。
神戸を中心に活動する人気インスタグラマー・ウラリエさんは、「お肉もお出汁も本当においしい! 大根おろしが入っているからか、たくさん食べても胃もたれしないんです」と自身のラジオ番組で語りました。さらには、スタッフが席で出来上がりまで調理してくれるため、「最高の状態で」(ウラリエさん)口に運べるのだそうです。
そのすき焼きを目当てに訪れた客の多くが注文するというのが「サンドウイッチ(ビーフカツ)」です。神戸の手土産としても長年親しまれ続ける存在。ふんわりとした食パンにマスタードとバターを塗り、自家製ケチャップソースで味付けしたビフカツをサンドしています。
このサンドウィッチ、包装紙にまでこだわりがあるといいます。もんの包装紙やメニュー、マッチ箱は、神戸の風景をモダンに描いた画文集『神戸百景』(1962年発行)などで知られる創作版画家・川西英さんがデザインしたものなのです。そのカラフルでどこか懐かしいデザインは、現在も名店の伝統として、その味とともに神戸の地に息づいています。
※ラジオ関西『Clip火曜日』より